宿怨しゅくえん)” の例文
天下の擾乱じょうらんも久しいことだ。世上、これを皇統こうとうの争いともいっているが、またそもそもは、この義貞となんじとの宿怨しゅくえんにもよる。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
道衍と建文帝けんぶんていと、深仇しんきゅう宿怨しゅくえんあるにあらず、道衍と、燕王と大恩至交あるにもあらず。実に解すからざるあるなり
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
コップは方々へ飛び、テーブルはひっくり返った。百姓らは本気になっていった。宿怨しゅくえんを晴らそうとしていた。人々は床にころがって、猛然とつかみ合った。
「僕が悪かったに相違ないが、先方むこうはそれを好い機会に宿怨しゅくえんを晴らす積りだから卑劣極まる」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
彼は親の権威を頑固に守り通していたし、家代々の宿怨しゅくえんにおそろしく意地張りであったのだ。だが彼は娘を愛していた。彼は娘をもうこの世のものではないとあきらめて悲しんでいた。
ただ通りかかったというだけで、なんらの宿怨しゅくえんも、無礼もあるものではない。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
城弾三郎を討ったるは宿怨しゅくえんを果すため
一つには魏の求めに逆らわず、二つには蜀との宿怨しゅくえんを結ばず、三つにはいよいよ自軍の内容を充実して形勢のよきに従う。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
関ヶ原以来の宿怨しゅくえんといったようなものがついて廻るからな。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と寺島判事も早川先生には宿怨しゅくえんを持っていた。
母校復興 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「何もかも、お聞き及びでしょうが、今は、宿怨しゅくえんに宿怨が積もり、解きがたい争いとなりました。悪くすると、これは、大乱の兆しもみえまする」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
予と徐州のいきさつを承知しながら、徐州のぼくに任ずるからには、それに併せて、この曹操にも宿怨しゅくえんを買うことは、彼は覚悟の上で出たのだろう。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日ごろ織田方に根づよい宿怨しゅくえんをもっている本願寺末派の長島門徒もんとに襲撃されて、この地方の織田被官はたいてい殺戮さつりくや焼亡の難に遭ったのであった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
信仰の上だけでも、この二人の間には、犬猿もただならぬ暗闘のあるはずですが、ヨハンの口裏には、何かより以上な宿怨しゅくえんがあるやに思われるふしがあります。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上州方面にもはや、年来、甲州家に宿怨しゅくえんあるともがらが、織田の手廻しを迎え入れて、火の手をあげ、道をふさいでいる。おやかた以下大勢して、無難に通れようとは考えられぬ。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「承知いたした。御提示の条件をもって、宿怨しゅくえんを水に流し、改めて、隣交のよしみを結び申そう」
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
忘れたのか。と曹操とは、宿怨しゅくえんのあいだがら、以来何もけてはいない。——いまもし、彼の誘交にまかせて、彼の下風に降れば、後にかならず害されるにきまっておる
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宿怨しゅくえんただならぬ仲の吉岡拳法の一子と、偶然にも、素裸で会う機会につかまってしまった。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
せっかくの御配慮ではあるし、殊に、前田殿には、年来の敵たる宿怨しゅくえんもわすれて、せつに内蔵助成政の一命を助けたまわれと、こん早朝から、筑前様へ、熱心なおとりなしでござった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
毛利氏と尼子氏との宿怨しゅくえんは、大永三年、尼子経久つねひさと毛利元就もとなりとの手切れ以来であるから——その間の興亡流血は、ことし天正六年まで、実に五十六年間にわたる悲壮な闘争をつづけて来たわけである。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
両家の白骨を埋め合って来た宿怨しゅくえんのあいだなのである。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
第二、宿怨しゅくえん私謀しぼうをいだかぬこと。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここは宿怨しゅくえんの戦場だ。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)