客間サロン)” の例文
日曜の午後二時、男爵邸の小客間サロンに集った青年達は、男爵を中心に、無駄話の花を咲かせて、長閑のどかな春の日の午後を過して居ります。
判官三郎の正体 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
従って、美奈子は母の客間サロンに、どんな男性が蒐まって来るのか、顔丈も知らなかった。無論紹介されたことなどは、一度もなかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
食堂のとなりの客間サロンへはいって見ると、楽譜を取り散らした隅のほうの床の上に、ピアノが置かれてあったあとがはっきりと残っていた。
キャラコさん:05 鴎 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
こと何時いつも冷汗をかくのは大小の客間サロンの日本的装飾が内地の田舎ゐなか芝居の書割かきわりにも見る事の出来ない程乱雑と俗悪ぞくわるとを極めて居る事である。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
一週に二回数人の知人が、その寡婦かふの炉のまわりに集まることになっていて、そこに純粋な王党派の客間サロンをこしらえていた。皆お茶を飲んだ。
シルヴァン・コーンは彼を、イスラエル系統の二、三の客間サロンへ紹介していた。そこで彼は、才知を好むこの民衆に通例の才知をもって迎えられた。
座敷から、風呂場から客間サロンから、いちどに、吐き出されて来た人間は、彼ひとりを見つけて、大げさに追い廻して来た。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ついいましがた客間サロンの窓ごしに見てゐた、まだ枯葉のすこし殘つてゐる櫻の木の下を通りながら、小ぢんまりした食堂の横を拔けて、裏手へ出ていつた。
生者と死者 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
自分は矢張りコメデイ・フランセエズの樣な一流の劇場の客間サロンに夜會服の裾を引いて歩く貴婦人を標準として
巴里の旅窓より (旧字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
バルザックが「従妹ベット」の中のパンセラスに関しての芸術論で「客間サロンで大成功をして、大勢の芸術愛好家に相談をされて、批評家になってしまった。」
バルザックに対する評価 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
客間サロンには二、三の先客が来ていた。マダム・ヴァンクールは、ランジェの顔を見ると
ふみたば (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
青い血と黒い血とは剣を持つてにらみ合つた。その頃、青い血を駆逐する社会上の敵は黄色の血の流れる成上り者パルヴニウだつた。だが巴里の客間サロンで青い血の人気を奪ひつゝあるものはこの黒い血の連中だつた。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
客間サロンりて行くのを眺めてゐることだつた。
それにしても、この客間サロンの美しさは何うでしょう、飾電灯シャンデリアや英国製の絨毯や、波斯ペルシヤの壁掛けの華やかさに驚いたわけではありません。
それをまた、みんなが迎合するのだから、いやになってしまいますわね。客間サロンにいらっしゃるのがお厭なら、図書室ライブラリーの方へ、御案内いたしますわ。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
T夫人の客間サロンは、マリユス・ポンメルシーの世間に対する知識のすべてだった。彼が人生をながむることのできる窓は、それが唯一のものだった。
玄関へ入ると広い内椽ベランダで、そこからすぐ二階へあがれるようになっている。半開きになった右手は客間サロンらしく、ドアの隙間からそれらしい調度が見えていた。
キャラコさん:05 鴎 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
別荘の日本間には、どこの座敷にも灯明あかりがはいっていた。が、そこには客のすがたはなかった。噪音を辿たどって、トム公は洋館の窓から客間サロンをのぞいてみた。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
クリストフは、シルヴァン・コーンの紹介により、また自分の技倆ぎりょうによって、多くの客間サロンから迎えられていたが、そこで彼は珍しげに、パリー婦人を観察した。
……この二日間、私の床は客間サロンに移された。でも部屋が非常にひろくて、衝立ついたてや大椅子やピアノで仕切られてあるから、外からは見えない。私には階段をのぼるのが困難である。
僕は十五万円も費したと云ふ大使館の客間サロンまつたく失望して居るが、かへつて微力な中から是丈これだけある種の調和的な日本趣味を具体し得た日本まちを感心だと思ふ。惜しい事には女達の衣裳いしやうまづい。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
出入りする王党の客間サロンにおける彼の羽振りは、彼の自尊心を少しも傷けないものだった。彼は至る所で有力者だった。
青木君の死をまざ/\と知つてゐるだけ、あの方の弟までが、貴女の客間サロンに出入することは、僕の心を暗くするのです。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
その騒々しい客間サロンをのがれて、奈都子は庭へ下りていた。例の神学生の今村といっしょに。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうだ確かに、彼らの客間サロン的社会主義は人の知るとおりのものである。
自分は矢張やはりコメデイ・フランセエズの様な一流の劇場の客間サロンに夜会服の裾を引いて歩く貴婦人を標準として、其れに中流の生活をして居る素人しろうとの婦人の大多数を合せて仏蘭西フランスの女の趣味を考へたい。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
わたしの家の客間サロンにはそんな人は入れない。
バルザックに対する評価 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「本当に、暫らくお見えになりませんでしたね。貴君あなたが、いらつしやらないと、此処の客間サロンも淋しくていけない。」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
「本当に、暫らくお見えになりませんでしたね。貴君あなたが、いらっしゃらないと、此処ここ客間サロンさみしくていけない。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
もし、自動車が転覆しなかつたら、あの方は今日あたりは、わたくし客間サロンへお見えになつたかも知れませんよ。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)