奥向おくむき)” の例文
「ここら辺にはお邸も多い。若い女子も沢山いる。お邸方の奥向おくむきへ参って若い姫達のお目にかけたら喜んで飛び付いて参ろうぞ」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
奥向おくむきの女性たちにも、稽古事や、掃除や、また、籠城攻戦の場合の習練などもさせて、起きるから寝るまで、暇のない生活規律を立てさせた。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
左膳の娘はななる者が、奥向おくむきへ御奉公中、せん殿様のお手が付き懐妊の身となりしが、其の頃お上通かみどおりのお腹様はらさま嫉妬深しっとふかく、お花をにくみ、ついとがなき左膳親子は放逐ほうちく仰付おおせつけられ
また長崎から取り寄せた伽羅きゃらで櫛をかせ、そのみねに銀の覆輪ふくりんをかけて「源内櫛げんないぐし」という名で売出したのが大当りに当って、かみは田沼様の奥向おくむきからしもは水茶屋の女にいたるまで
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
聞けばこの母親娘がある屋敷やしき奥向おくむき奉公中ほうこうちう臨時りんじ頂戴物てうだいものもある事なればと不用分ふようぶんの給料を送りくれたる味の忘られず父親のお人よしなるに附込つけこみて飽迄あくまで不法ふはふちんじたるものゝよしそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
御広敷とは大奥に出仕する役人の詰所つめしょをいうので、役人には御広敷御用人を主席にして次に御用達、番頭、番衆等がある。すべ奥向おくむきの事務及奥女中の取締をつかさどる。添番衆は極めて軽い身分である。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
で、勿論、奥向おくむきもいい。信長のあの性格へ、そう開き直りもせず、やんわりといさめるには、彼に限る——
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
國「本当にまアあきれますよ、夜夜中よるよなか奥向おくむきの庭口へ這入はいり込んで済みますかえ」