なくな)” の例文
遊「君の後曳も口ほどではないよ。この間那処あすこ主翁おやぢがさう言つてゐた、風早さんが後曳を三度なさると新いチョオクが半分なくなる……」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
山「いわ、なくなる時にゃア失るから大騒ぎやって行かなくっても宜い、ア云う親孝行のだから有りゃア取って置いて呉れる」
それからもう一方の手で胸の上を軽くでてくれると、急に今までの圧迫感がなくなってしまった。ああ、良かった、と思わず口に出したとき、目がめた。
牛人 (新字新仮名) / 中島敦(著)
その哲学者面を砂塵がサーッと吹きつけて通った後では、確かに二三人は消えてなくなって居るだろう。
The Affair of Two Watches (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
拾ったとか、なくなったとか、落したとかいう事は多数の児童こどもを集めていることゆえ常に有り勝で怪むにたらないのが、今突然この訴えに接して、自分はドキリ胸にこたえた。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
たたつけるように投込んだのは小歌の写真で、くるくると廻って沈んだと思うとすぐ浮上り、十二三分の間に写真は焦げただれて、昨日までは嬉しくながめられた目元口元、見る/\消てなくなったを
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
少くとも此れ以上醉つてはならぬとあせつた。すると急れば急るほど、私は醉の𢌞るを覺え、眼がぐら/\して、身體全體が次第々々に他人のものであるやうな心持がして………遂に意識がなくなつた。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
兼「ちょう兄い……不思議だな、一昨日おとゝいあたりからズキ/\する疼みがなくなってしまった、能く利く湯だなア」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ところが段々その雪も解けてなくなる時分になりますと、穴の隅からたら/\と清水が垂れてまいります。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
へい/\御尤もさまでございます……わたくしどもの忰は貴方様のことばかり申して、誠に情ないことをした、わたくしがお刀さえなくなさなければ、チャンとしてお屋敷においでなさろうもの
あの巾着にゃア金は沢山たんと入ってやアしないよ、三両一歩入ってるの、此方こっちへ返えせ、此のめえも此方ア銘仙の半纒がなくなってらア、うから眼をけて居たんだ、近所で毎度顔を見て知ってるぞ
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)