外囲そとがこい)” の例文
旧字:外圍
類焼るいしょうの跡にてその灰をき、かりに松板を以て高さ二間ばかりに五百間の外囲そとがこいをなすに、天保てんぽう時代の金にておよそ三千両なりという。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
女郎花 矢狭間も、物見も、お目触りな、泥や、鉄の、重くるしい、外囲そとがこいは、ちょっと取払っておきました。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やがて船室の外囲そとがこいのベンチに長々と横になって、星のちらつく空を仰いだ。少しうとうとと眠りさえした。
お島はかなめけやきの木とで、二重になっている外囲そとがこいまわりを、其方そっちこっち廻ってみたが、何のこともなかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そして一雨ひとあめ降ればすぐに雑草が芽を吹きやがて花を咲かせ、忽ちにして蝶々ちょうちょう蜻蛉とんぼやきりぎりすの飛んだりねたりする野原になってしまうと、外囲そとがこいはあってもないと同然
願行寺は門が露次の奥に南向に附いていて、道を隔てて寄宿舎と対しているのは墓地の外囲そとがこいである。この外囲がもとまばらな生垣で、大小高低さまざまの墓石が、道行人の目に触れていた。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
あたりが如何いかにも静かで、何一つ動くものがないので、しばらくじっと見ていると、向うにはっきり見えている外囲そとがこいさくがじりじりと手前の方へ寄って来て、暫くしてまた留まるように見える。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
私たち二人は三田通みたどおりに沿う外囲そとがこいどぶふち立止たちどまって何処か這入はいりいい処を見付けようと思ったが、板塀には少しも破目やぶれめがなく溝はまた広くてなかなか飛越せそうにも思われない。
きざはしを下りざまに、見返ると、外囲そとがこいの天井裏に蜘蛛くもの巣がかかって、風に軽く吹かれながら、きらきらと輝くのを、不思議なるちりよ、と見れば、一粒いちりゅうの金粉の落ちて輝くのであった。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
右は高等学校の外囲そとがこい、左は角が出来たばかりの会堂で、そのそばの小屋のような家から車夫が声を掛けて車を勧めた処を通り過ぎると、土塀や生垣いけがきめぐらした屋敷ばかりで、その間に綺麗きれいな道が
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それを這入はいると、向うにすすけたような古家の玄関が見えているが、そこまで行く間が、左右を外囲そとがこいよりずっと低いかなめ垣で為切しきった道になっていて、長方形の花崗石みかげいしが飛び飛びに敷いてある。
百物語 (新字新仮名) / 森鴎外(著)