堀切ほりきり)” の例文
花菖蒲はなしょうぶ及び蝿取撫子はえとりなでしこ、これは二、三日前、家の者が堀切ほりきりへ往て取つて帰つたもので、今は床の間の花活はないけに活けられて居る。花活は秀真ほつまたのである。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
曳舟まで出て見ると、場末の町つづきになって百花園ひゃっかえんも遠くはない。百花園から堀切ほりきり菖蒲園しょうぶえんも近くなって来る。
向島 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
一度いちどつてようようで、まだかけたことのない堀切ほりきりへ……いそさふらふほどに、やがてくと、きぞわづらはぬいづれあやめが、はゞかりながらばかりでびてた。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
従来、東京付近にある堀切ほりきり、四ツ目などのハナショウブ園は、みなかまえが小さくて問題にならぬ。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
その次が亀戸かめいどの藤、それから堀切ほりきりの菖蒲という順番で、そのなかでは大久保が比較的に交通の便利がいゝ方であるので、下町からわざ/\のぼってくる見物もなか/\多かった。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
千住せんじゅ辺へ出かけた時とか、または堀切ほりきり菖蒲しょうぶ亀井戸かめいどふじなどを見て、彼女が幼時を過ごしたという江東方面を、ぶらぶら歩いたついでに、彼女の家へ立ち寄ったこともあり
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「見えないかも知れない、曲っているらしいから。今度は堀切ほりきりの辺へ行って見ようね。」
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
菖蒲しょうぶで名高い堀切ほりきりも、今は時候じこうはずれ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ここに亀戸かめいど押上おしあげたま堀切ほりきりかねふち四木よつぎから新宿にいじゅく金町かなまちなどへ行く乗合自動車が駐る。
寺じまの記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
八百屋やおやでお聞下さい。天気がよろしく候故御都合にて唖々ああさんもお誘い合され堀切ほりきりへ参りたくと存候間御しる前からいかがに候や。御たずね申上候。もっともこの御返事御無用にて候。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)