城楼じょうろう)” の例文
旧字:城樓
寄手よせての浅野、小西などの軍は、遠く海から山越えで運送して来た大船三隻をうかべ、それに砲を載せて城楼じょうろうへ弾丸をうちこんだりした。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真中に支那風の城門(勿論輪郭ばかり)を力ある線にて真直に画いて城楼じょうろうの棟には鳥が一羽とまつて居る。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
しかしそのほかにも画面の景色は、——雪の積った城楼じょうろうの屋根だの、枯柳かれやなぎつないだ兎馬うさぎうまだの、辮髪べんぱつを垂れた支那兵だのは、特に彼女を動かすべき理由も持っていたのだった。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
うまの刻を過ぎた。諸方から焼き立てられた火の手は、とうとう本丸に達した。原城の最後の時が来た。城楼じょうろうの焼け落つる音に交って、死んで行く切支丹宗徒の最後の祈祷や悲鳴が聞えた。
恩を返す話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ぶたおかのごとく、雞は城楼じょうろうと見える。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
ただ城楼じょうろう高きところ——さがふじ大久保家おおくぼけ差物さしものと、淡墨色うすずみいろにまるくめたあおいもんはたじるしとが目あたらしく翩翻へんぽんとしている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また若葉の候と定めたるも、初夏草木の青々茂りて半ば城楼じょうろうを埋めたる処は最も城の堅固なるを感ずべし。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ところが、その猛射は、滅前の一燦いっさんだった。程なく、はたと止むと、城楼じょうろうの一端から、ボウと赤い焔がして、月の夜空へ濛煙もうえんを吐き出した。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
金城きんじょう大坂の大規模な築城企画は、すでにその景観のあらましを竣工しゅんこうし終っていて、夜ともなれば、八層はっそう天守閣てんしゅかく、五重の城楼じょうろう、本丸、二の丸、三の丸にわたる無数の狭間はざま狭間から、あかるい灯が
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここは城楼じょうろうの上ではなかったが、導いて行く道は、暗い階段を二度も降りて行くのであった。官兵衛はすでに、自分の血を自分でぐような予感と、そそけ立つ髪の根の寒さを如何ともし難かった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
といって、信長は、彼をうながして城楼じょうろうの上へともなった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)