土屋つちや)” の例文
かつみさんといって、あの甥の達者たっしゃな時分には親しくした人だ。あの甥は土屋つちやという家にとついだ私の実の姉の一人息子ひとりむすこにあたっていて、年も私とは三つしか違わなかった。
分配 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「お薬湯やくとうが切れたのです。いつぞや土屋つちやが送ってくれた薬種のうちの黄袋きぶくろはもうありませぬか」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勘「ムヽ、カ、カ、神田のまき様の部屋でんしまして、小川町おがわまち土屋つちやの……」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
帰朝当座の先生は矢来町やらいちょうの奥さんの実家中根なかね氏邸に仮寓かぐうしていた。自分のたずねた時は大きな木箱に書物のいっぱいつまった荷が着いて、土屋つちや君という人がそれをあけて本を取り出していた。
夏目漱石先生の追憶 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
振たて何と申され候や土屋つちや六郎兵衞のことば夫程それほどおもきか中納言樣の御詞おことばそむくに於ては仰付おほせつけられの心得ありと大音に呼はりければ何れもきもつぶし時を移さず開門に及べば山野邊主税之助先にたつて門を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
対門たいもんの小姓組番頭ばんがしら土屋つちや佐渡守邦直くになおの屋敷は火を失していた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ぎ屋敷に近付ちかづき一同に表門へ懸り小石川御館の御使者ししや山野邊主税之助なり開門かいもんあるべしと呼はれば夜番の御徒士目附こたへて越前守には閉門中へいもんちうにて開門かなひ申さずといふ主税之助越前殿閉門は誰より申付候やと尋ぬるに御徒士目附申やう土屋つちや六郎兵衞殿の申付なりと此時このとき主税之助わざいかりの聲を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ゆるして砂利じやりの上に引居ひきすえられしてい此世の人とは見えざりけり白洲しらすの正面には大岡越前守殿着座ちやくざ有左の方には御目附土屋つちや六郎兵衞殿縁側えんがはには目安方めやすがた與力よりき下には同心に至る迄威儀ゐぎ嚴重げんぢうひかへたり此時大岡殿は武州幸手宿富右衞門とよばれ其方歳は何歳いくつなるぞと尋問とはれしかば富右衞門ハツと平伏し少し顏を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)