四間よま)” の例文
四間よましかない狭い家だったけれども、木口きぐちなどはかなり吟味してあるらしく子供の眼にも見えた。間取にも工夫があった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今度引移りましたのは今戸の小さい家で、間かずは四間よまのほかに四畳半のはなれ屋がありまして、そこの庭先からは、隅田川がひと目に見渡されます。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼は土曜日毎に自分の名前の僅かに十五枚を手に入れるばかりであった。——而も現在の基督降誕祭の精霊は彼の四間よまの家を祝福してくれたのであった。
その家は僕のうちから三丁とは離れない山のふもとにあって、四間よまばかしの小さな建築つくりながらよほど風流にできていて庭には樹木多く、草花なども種々植えていたようであった。
初恋 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
妾宅はあがかまちの二畳を入れて僅か四間よまほどしかない古びた借家しゃくやであるが、拭込ふきこんだ表の格子戸こうしど家内かない障子しょうじ唐紙からかみとは、今の職人の請負うけおい仕事を嫌い、先頃さきごろまだ吉原よしわらの焼けない時分
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
私たちはそれから都合四間よまの部屋を通りぬけてみたが、かの跫音はいつも二人のさきに立って行く。しかもその形はなんにも見えないで、ただその跫音が聞こえるばかりであった。
先日聞いておいた番地をたよりに、尋ねたずねて行き着くと、庭は相当に広いが、四間よまばかりの小さな家に、老人は老婢ばあやと二人で閑静に暮らしているのであった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
昔風むかしふうもんはひると桑園くはゞたけあひだ野路のみちのやうにして玄關げんくわんたつする。いへわづか四間よま以前いぜんいへこはして其古材そのふるざいたてたものらしくいへかたちなしるだけで、風趣ふうちなにいのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
しまいには新築の二階座敷を四間よまともに吾有わがゆうとした。余は比較的閑寂な月日のもとに、吸飲すいのみから牛乳を飲んで生きていた。一度はさじで突きくだいた水瓜すいかの底からいて出る赤い汁を飲ましてもらった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)