くら)” の例文
『後漢書』南蛮伝に交趾の西に人をくらう国あり云々、妻を娶って美なる時はその兄に譲る。今烏滸おこ人これなり。阿呆を烏滸という起りとか。
死んでからはその屍骸を獣がくらい、鳥がついばみ、四肢が分離して流れ出し、なまぐさい悪臭が三里五里の先まで匂って人の鼻をき、皮膚は赤黒しゃくこくとなって犬の屍骸よりも醜くなること
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
世辭愛嬌せじあいけうも申分なく、それよりも男を惹きつける、不思議な魅力があつて、この女に接近する者は、どんなに道心堅固でも、最後には他愛もなく捕虜とりこにされ、金も精氣もくらひ盡されて
文徳実録もんとくじつろくに見える席田郡むしろだごおり妖巫ようふの、その霊転行てんこうして心をくらい、一種滋蔓じまんして、たみ毒害を被る、というのも噉心の二字が吒祇尼法の如く思えるところから考えると、なかなか古いもので
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彫刻ほりしたふなおよぐもい。面白おもしろうないとははぬが、る、く、あるひなまのまゝにくくらはうとおもふものに、料理りやうりをすれば、すみる、はひる、きれなににせい、と了見れうけんだ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此の娑婆世界にして雉となりし時は鷹につかまれ、鼠となりし時は猫にくらわれ、或いは妻子に、敵に身を捨て、所領に命を失いし事大地微塵よりも多し。法華経の為には一度も失う事なし。
それは人の或は毒を置かむことをおそれたからである。たま/\忠行は餅菓子を製することを善くしたので、或日その製する所を家康に献じた。家康は喜びくらつて、此より時々じゞ忠行をして製せしめた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
飢寒極めて虎母その子をくらわんとす、五百の道士これを見て誰か能く身を捨て衆生を救わんと相勧む、太子聞きて崖頭に至り虎母子を抱いて雪に覆われたるを見
抽斎が酒を飲み、獣肉をくらうようになったのはこの時が始である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
野中の掃溜はきだめへ捨て鶏犬のつつくらうに任すと書いた、眼前の見聞を留めたもの故事実と見える。
善搏虎は麞を殺すに疲るる事夥しく血肉を啖いおわって巣へ帰るに長時間を費やした、因って残肉をかくし置き一日それをくらって早く帰ると獅が今日汝何故早く帰るぞと問う