喰物くいもの)” の例文
甲「なに肥料こやしをしないものはないが、直接じかに肥料を喰物くいものぶっかけて喰う奴があるか、しからん理由わけの分らん奴じゃアないか」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
骰子さい転ばしをするもあれば花をもてあそぶもあり、随分立派な人でも喰物くいものけ位はやって居る。それが非常に愉快なものと見える。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ずいぶんとおはええんですねえ、まったく。諺にもあります通り、喰物くいものにありつくのは早起きの鳥ですよ。
ら云たって仕方しかたはないが、何しろ喰物くいものが不自由だろう、着物が足りなかろうと云て、れから宅にかえっ毛布ケットもって行てやったり、牛肉の煮たのを持て行て遣たり
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「ウン……あんな女だっていうぜ。毛唐けとうの船長なんか、よくそんな女をボーイに仕立てて飼ってるって話だぜ。寝台ねだいの下の箱に入れとくんだそうだ。自分の喰物くいものけてね」
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一 喰物くいものはむだにならぬ様に心を用い別して味噌と漬物とは用いたる跡にも猶心を用うべし
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
別に女を喰物くいものにしようという悪い腹は微塵もないんですから、逃す時にも当座の小遣銭こづかい、それから往復の旅費、此方こっちへ呼もどしてから、本所石原町いしはらちょうに知っている者があったので
あぢさゐ (新字新仮名) / 永井荷風(著)
此のうちの息子が誠に親切に時々諸方ほう/″\っちゃア、旨い物と云って田舎の事だから碌な物もありませんが、喰物くいものを見附けて来ては病人にります。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
乞食こつじきぎょう をやりました。僅かな物を上げてくれるのですけれども、五、六軒廻って来ると一日の喰物くいものくらいはある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
……もっともこれは曲馬団なるものの性質上止むを得ないとしても、彼等が註文する喰物くいものや酒の種類があまり上等でない。いなむしろ下層社会の嗜好しこうに属するものが大部分である。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
織「何も心得んとて、先方で立腹するところはもっともじゃアないか、喰物くいものの中へ泥草履を投入れゝば、誰だって立腹致すのは当然あたりまえのことじゃ、それから何う致した」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それは皆旅人の泊る所ですが別段宿賃を払う訳でもなしただ薪代まきだい喰物くいものを買うてその代を払うだけの事です。その紳士の一行も向い側の茅屋あばらやに入ってしまいました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
そんなけがれた物はおらが口へ入れられねえと云って寄付よせつけねえで打叩ぶッたゝくからそうすると喰物くいものも段々に疲れて来て、そんな事を云わずに何うか少しべい喰ってお呉んなせいといい
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
日頃罪人一同の喰物くいものの頭をね、あまつさねんに二度か三度のお祭日まつりび娑婆飯しゃばめしをくれません、余り無慈悲な扱いゆえ、三人の総代を立てゝ只管ひたすら歎願たんがんいたしました処が、聞入れないのみか
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
脹面ふくれッつらをして寄せ付けねえと云う不人情なお母だから、どうせお前は喰物くいものになるので可愛そうな身の上だが、これも仕様がないが、まアどう云う喧嘩をしたのだか、手紙に死ぬと書いてあったが
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)