とわ)” の例文
お辰かと珠運もだきしめてひたいに唇。彫像が動いたのやら、女が来たのやら、とわつたなく語らば遅し。げんまたげん摩訶不思議まかふしぎ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
風の、そのあわただしい中でも、対手あいてが教頭心得の先生だけ、ものとわれた心のほこりに、話を咲せたい源助が、薄汚れた襯衣しゃつぼたんをはずして、ひくひくとした胸を出す。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お車はと婢にとわれて、思切って勘定をと云うと帳場ではすでに出来て居て、車より先に書附が来た。
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
すなわち尋常紙上に記載する事件のはじめにおいて次をふて我儕の所見を叙述し、以てあまねく可否を江湖の君子にとわんとし、ここにその目を掲するに左の数項の外に出でず。
秋の中過なかばすぎ、冬近くなるといずれの海浜かいひんとわず、大方はさびれて来る、鎌倉かまくらそのとおりで、自分のように年中住んでる者のほかは、浜へ出て見ても、里の子、浦の子、地曳網じびきあみの男
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
松茸まつだけの講釈は聞き得たり。この上は松茸の料理法をとわんと小山の妻君「モシお登和さん、その松茸は何のお料理になさいます」お登和嬢「そうでございますね、これで松茸の御飯をきましょう。 ...
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)