唐突いきなり)” の例文
あごあたりまで湯に漬りながら、下歯をガクガクと震わせながら、しかも彼は身動きすることを怖れて、数瞬じいっとこらえていた。と、唐突いきなり
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
なんぢ覺悟かくごをせよ』女王樣ぢよわうさま唐突いきなりこゑいからし、ひながら地韛踏ぢだんだふんで、『あたまねるが、宜いか、たついま!さァ!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
唐突いきなり、横のめりに両足を投出すと、痛いほど、前の仕切にがんといたひじへ、頭を乗せて、自分でくびつかんでも、そのまま仰向あおむけにぐたりとなる、いかね。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
茫然ぼんやり立つてゐる小児でもあれば、背後うしろからそつと行つて、目隠しをしたり、唐突いきなり抱上げて喫驚びつくりさしたりして、快ささうに笑つて行く。千日紅の花でも後手に持つた、腰曲りの老媼ばばあでも来ると
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
わたくし狂喜きやうきのあまり、唐突いきなり武村兵曹たけむらへいそうくびけて
Mは唐突いきなりとこんなことを尋ねた。
海のほとり (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と、突然いきなり林の中で野獣でも吼える様に怒鳴りつける。対手がそれで平伏へこたまれば可いが、さもなければ、盃をげて、唐突いきなり両腕を攫んで戸外そとへ引摺り出す。踏む、蹴る、下駄で敲く、泥溝どぶ突仆つきのめす。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)