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咥
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くは
ふりがな文庫
“
咥
(
くは
)” の例文
見ると、床に落ちて、
粉々
(
こな/\
)
に砕けてゐる
洋盃
(
コツプ
)
の
側
(
そば
)
を、大きな灰色の鼠が血だらけな英雄の心の臓を
咥
(
くは
)
へて小走りに逃げのびようとしてゐる。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
猫の方は猫で、相変らず蛙を
咥
(
くは
)
へて来て、のつそりと泥だらけの足で夕闇の座敷をうろついて居た。彼は時にはそれらの猫を強く蹴り飛ばした。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
「
煙管
(
きせる
)
なんか
咥
(
くは
)
へて覗く奴があるか。そいつは
煙硝
(
えんせう
)
だよ。——火が移つて見ろ、お前も俺達も木ツ端
微塵
(
みぢん
)
だぞ」
銭形平次捕物控:155 仏像の膝
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
ゆき子は一本唇に
咥
(
くは
)
へて、伊庭にマッチをつけて貰つた。伊庭はうるさい程、いろいろな事を尋ねた。
軈
(
やが
)
て、ズルチン入りのどろりとした汁粉が運ばれた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
さては去年の
病鶴
(
びやうかく
)
恩
(
おん
)
に
報
(
むくは
)
んため
異国
(
ゐこく
)
より
咥
(
くは
)
えきたりしならん、何にもあれいとめづらしき稲なりとて
領主
(
りやうしゆ
)
に
奉
(
たてまつ
)
りけるに、しばらくとゞめおかれしのちそのまゝ
主
(
あるじ
)
にたまはり
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
▼ もっと見る
あんな小さいこむすめを
咥
(
くは
)
へてゐるといふことは、生きるに重みを感じないものか。
末野女
(旧字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
尋る中
彌生
(
やよひ
)
の空も十九日
子待
(
ねまち
)
の月の
稍
(
やゝ
)
出て
朧
(
おぼろ
)
ながらに差かゝる
堤
(
つゝみ
)
の
柳
(
やなぎ
)
戰々
(
そよ/\
)
と
吹亂
(
ふきみだ
)
れしも物
寂寞
(
さびしく
)
水音
(
みづおと
)
高
(
たか
)
き大井川の此方の
岡
(
をか
)
へ來
掛
(
かゝ
)
るに何やらん二
疋
(
ひき
)
の犬が
爭
(
あらそ
)
ひ居しが安五郎を見ると
齊
(
ひと
)
しく
咥
(
くは
)
へし物を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
黒衣を着け、葉巻
咥
(
くは
)
へて歩いてゐる。
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
その折この詩人は穢い百姓家の入口に、老いた一人の印度人の婆さんが、だらしなく
蹲踞
(
しやが
)
んで、薄穢い粘土製のパイプを
咥
(
くは
)
へて、すぱすぱ煙草を喫してゐるのを見た。
茶話:12 初出未詳
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
さては去年の
病鶴
(
びやうかく
)
恩
(
おん
)
に
報
(
むくは
)
んため
異国
(
ゐこく
)
より
咥
(
くは
)
えきたりしならん、何にもあれいとめづらしき稲なりとて
領主
(
りやうしゆ
)
に
奉
(
たてまつ
)
りけるに、しばらくとゞめおかれしのちそのまゝ
主
(
あるじ
)
にたまはり
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
八五郎の顏、——獲物を
咥
(
くは
)
へた獵犬のやうな顏を見ると、平次はそつと物蔭に呼びました。
銭形平次捕物控:054 麝香の匂ひ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼の目には、もんどりを打つ竹ぎれからす早く身をかはして、いきなりそれを目がけて飛びかかると、その
竹片
(
たけぎれ
)
を
咥
(
くは
)
へたまま、真しぐらに逃げて行く白犬が、はつきりと見えた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
伊庭は
毒舌
(
どくぜつ
)
を吐きながら、煙草を出して
咥
(
くは
)
へると、マッチを探す様子で、そこいらにある、ラジオや大きな枕に皮肉な笑ひを浮べた。ゆき子は伊庭の表情を見て胸にかつと燃え立つものを感じた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
ある時日光へ往つての
帰途
(
かへりみち
)
に、夫人は誰かに買つて帰るつもりで、土産物を売つてゐる一軒の
小店
(
こみせ
)
へ入つた。村井氏は葉巻を
咥
(
くは
)
へたまゝ
後
(
あと
)
からのつそり
蹤
(
つ
)
いて往つた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
新吉の顏には
蔽
(
おほ
)
ひ切れない得意の色が
漲
(
みなぎ
)
ります。ガラツ八の八五郎は、指を
咥
(
くは
)
へて引下がる外はありません。蜘蛛の習性に通じなかつたのが何んとしても八五郎の手ぬかりです。
銭形平次捕物控:145 蜘蛛の巣
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
この景色を見るために、
何故
(
なぜ
)
もつと早く目が覚めなかつたらうと、彼は思つた。縁を下りて、顔をば洗はうと庭を通ると白い犬が昨夜
咥
(
くは
)
へて行つた筈の
竹片
(
たけぎれ
)
は、萩の根元に転がつて居た。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
横町の師匠のところで
紛失
(
なく
)
し、お今の足袋は犬でも
咥
(
くは
)
へて行つたとすると、この家で無くなつた品で本當に發見されないのは、用箪笥の鍵と、お文の櫛と、たつた二つだけになります。
銭形平次捕物控:132 雛の別れ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
咥
漢検1級
部首:⼝
9画
“咥”を含む語句
咥内
咥楊枝
咥煙管