味噌漬みそづけ)” の例文
大喜おほよろこびで、其禮そのれいに、若干そこばく銀貨ぎんくわあたへやうとしたが、如何どうしてもらぬ。しひらしめたら、今度こんど重箱ぢうばこ味噌漬みそづけれてつてれた。
ムツは全体下等な味で煮ても味噌漬みそづけにしても下品な方だけれどもフライにすると大層淡泊で上品になる。それもムツの産地によって味が大層違う。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
る時、芸州げいしゅう仁方にがたから来て居た書生、三刀元寛みとうげんかんう男に、たい味噌漬みそづけもらって来たが喰わぬかとうと
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
いいえ、どう致しやして。家でこしらえやした味噌漬みそづけで、召上られるようなものじゃごわせんが」
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
秀吉の一行は、越水おちみずの街道にそう豪農らしい家に休息して、味噌漬みそづけで茶をのんでいた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それならば待たしやませ、しょツぱいが味噌漬みそづけこうの物がござるわいなう。」
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
女房の毎夜の寝物語は味噌漬みそづけがどうしたの塩鮭しおざけの骨がどうしたのとあきれるほど興覚めな事だけで、せっかくお金がうなるほどありながら悋気の女房をもらったばかりに眼まいするほど長湯して
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
夫の万吉が酒のさかな味噌漬みそづけを好きで、しかもそれは田舎いなかの麦味噌のが一ばんよいと、来るとからあちこち頼んであったのをかめにつめ、上の方があいているからといってはまた味噌をつめ足したりした。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
と叔父夫婦は気をんで、暦を繰つて日を見るやら、草鞋わらぢの用意をして呉れるやら、握飯むすびは三つも有れば沢山だといふものを五つもこしらへて、竹の皮に包んで、別に瓜の味噌漬みそづけを添へて呉れた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)