)” の例文
雪まぶれの外套を脱いだ寒そうで傷々いたいたしい、うしろから苦もなくすらりとかぶせたので、洋服の上にこの広袖どてらで、長火鉢の前に胡坐あぐらしたが、大黒屋惣六そうろくなるもの
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と云う返事を待つ必要は無論ない。ないが、決行する間際になると気掛りになる。頭でこしらえ上げた計画を人情がくずしにかかる。想像力が実行させぬように引き戻す。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
秦野屋はともともいわず、きせるをくわえて、帰って行くかごかきの影を見送っている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぞくほつするところつてこれ(二五)あたへ、ぞくとするところつてこれる。まつりごとすや、わざはひつてさいはひし、やぶれをてんじてこうし、(二六)輕重けいぢうたつとび、權衡けんかうつつしめり。
と聞くならば、退きならぬ瀬戸際せとぎわまであらかじめ押して置いて、振り返ってから、臨機応変に難関を切り抜けて行くつもりの計画だから、一刻も早く大森へ行ってしまえば済む。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)