)” の例文
母親の感化から、これももすると自分に一種の軽侮けいぶを持っている妹に、半衿はんえりや下駄や、色々の物を買って行って、お辞儀されるのをほこりとした。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
寛一君はその晩返事をしたためにかゝったが、もすると自分の苦情が先立つのに気がついた。彼方此方あっちこっちで叱られて、考えて見ると馬鹿々々しくなる。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
自分じぶん老衰者らうすゐしやであることをつたときあきらめのないすべては、もすればたがひ餘命よめい幾何いくばくもない果敢はかなさをかたうて、それが戲談じようだんいうて笑語さゞめときにさへえず反覆くりかへされて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
もすれば袖をとられて、何れかの一軒へ引きずり込まれさうなのを恐れる心とに胸を轟かしながら、用ありげにすた/\と、而も二度も、端から端を往きつ戻りつした。
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
父は平七がもすると幼い自分の顏を見詰めて、「なア坊んち、坊んちの嫁はん」をやり出しさうにするので、またこんなことを言ひ出して、平七の心を向け變へようとした。
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
自分もやっぱり同じ女であることの暗示を得るような、秘密な渇望と幻想とに、思い浸ることがあったが、もすると自分の目覚しい活動そのものすら
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
Akabane とある羅馬字綴ローマじつづりをもすると英語読みにアカベーンとやる。その都度つどみんなが笑う。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そしてそれがもすると、恋愛的な感情にまで変化することがあるのだつた。さうでなくても、何といつてもまだ十三やそこいらの幼い身で、遠い他郷に丁稚奉公に出てゐた私だつた。
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
世間の快楽については、何もしらぬらしい養父から、少しずつ心が離れて、長いあいだの圧迫の反動が、彼女をもすると放肆ほうしな生活に誘出おびきだそうとしていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
と父親はっとこらえている丈けにもすると腹が立つ。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
さう云ふ栄子の言葉や気持に、もするとだらけがちな気分を引締められさへする小森であつた。
女流作家 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
その晩、妻はもすると笑い出して
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)