利慾りよく)” の例文
貧富の懸隔のみあって平等がない。製品の目的は奉仕から利慾りよくへと転じ、労働は誠実から苦痛へと化した。この間から何の工藝が予期されようや。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
多年の間、利慾りよく権勢に目もくれず、たゞ国家のために、一意奮闘していらっしゃる。こう云うお方こそ、本当の国士本当の政治家だと思ったのです。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
の春見丈助利秋は元八百石もりょうしておりました立派な侍でありながら、利慾りよくのため人を殺して奪いました其の金で、悪運強く霊岸島川口町でたいした身代になりましたが、悪事というものは
けものが食えば野の草から、鳥がめば峰の花から、同じお稲の、同じ姿かたちとなって、一人ずつ世に生れて、また同一おなじ年、同一おなじ月日に、親兄弟、家眷親属、おのが身勝手な利慾りよくのために、恋をせかれ
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
莊子さうしてふゆめといふ義理ぎりまこと邪魔じやまくさしぎはまではとひきしむる利慾りよくこゝろはかりには黄金こがねといふおもりつきてたからなき子寶こだからのうへもわするゝ小利せうり大損だいそんいまにはじめぬ覆車ふくしやのそしりも梶棒かぢぼうにはこゝろもつかずにぎつてはなさぬ熊鷹主義くまたかしゆぎ理窟りくつはいつも筋違すぢちがひなる内神田うちかんだ連雀町れんじやくちやうとかや
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
健かに仕えよとて、心を込める者は絶えた。相応ふさわしい装いをと着せてくれる母はない。人々の愛はただ利慾りよくにのみ注がれている。器の生産は商品としての意味に過ぎない。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
私は労働の喜悦を許さない金権下の社会と、あの利慾りよくより知らない資本制度と、そうして小我しょうがを出ない個人主義とが、工藝の美に対し全く相容れないものであることをすでに述べた。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)