“刃金(はがね)” の例文
ぴゅっん——と細い刃金(はがね)でも唸るように刀が鳴った。馬之助の首はわずかに胴へ皮を余して、でんと、廊下へぶっ仆れた。
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
清きうしほに漬(ひた)りつつ、首(かうべ)をあげてまさに日の出でむとする方に向へば、刃金(はがね)、雷(いかづち)の連亙起伏する火山脈の極るところ
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
事と品とによれば刃金(はがね)と鍔(つば)とが挨拶(あいさつ)を仕合ふばかりです、といふ者が多かつたのだらう、とう/\天慶二年十一月廿一日常陸の国へ相馬小次郎郎党(らうだう)を率(ひき)ゐて押出した。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
灯を入れた雪見灯籠(どうろう)のあたり、雪を頂いた松の緑が淀んで、池の水の一角が、柔かい雪景色に切り込む刃金(はがね)のように、キラリと光る物凄い効果だったのかもわかりません。
猟色の果 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
平和(へいわ)を亂(みだ)す暴人(ばうじん)ども、同胞(どうばう)の血(ち)を以(もっ)て刃金(はがね)を穢(けが)す不埓奴(ふらちやつ)……聽(き)きをらぬな?……やア/\、汝等(おのれら)、邪(よこし)まなる嗔恚(しんに)の炎(ほのほ)を己(おの)が血管(けっくわん)より流(なが)れ出(いづ)る紫(むらさき)の泉(いづみ)を以(もっ)て消(け)さうと試(こゝろ)むる獸類(けだもの)ども
わたしはある男の魂のために、「みさ」の御祈りを願いに来たのです。いや、わたしの血縁のものではありません。と云ってもまたわたしの刃金(はがね)に、血を塗ったものでもないのです。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
鉄や刃金(はがね)でお体が出来ているような御様子ね。
滑らかな小石や刃金(はがね)の叢に ふたりは
優しき歌 Ⅰ・Ⅱ (新字旧仮名) / 立原道造(著)
刃金(はがね)の上に身を委(まか)す
捕われ人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
細い刃金(はがね)が三本通してあって、その上を、雁皮紙(がんぴし)の紙捻(こより)で実に根気よく巻きしめた物なのである。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
内匠頭は、湯浴(ゆあ)みをして、式服を着けた。刃金(はがね)を鎧(よろ)う気持であった。自分の心が危ういのだ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
偶然、この短い刃金(はがね)を握って離さなかったのが、奈落をのがれるただ一つの活路である。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
助九郎の刀が神霊を現わしたように、鏘然(しょうぜん)と、刃金(はがね)の鳴りを発したのである。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれどそれは三尺に近いもので、いわゆる胴田貫(どうたぬき)という分厚い刃金(はがね)である。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
刃金(はがね)の冴え音、剣の火花——新九郎は我を忘れて身をにじりだした。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その刃金(はがね)の打音は、意外な所にいる人の心耳へ響いて行った。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)