出来いでき)” の例文
旧字:出來
是はいかなる事の出来いできぬると、門人等も大に恐れ早く師に由を告ぐべしと、一両人の門弟走り出でんとせしに
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
なから舞いたりしに、御輿みこしたけ愛宕山あたごやまかたより黒雲にわかに出来いできて、洛中らくちゅうにかかると見えければ、——
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「悲しさの余りに、とかくもせで、かたらひ伏して、口をすひたりけるに、あさましきの口より出来いできたりけるにぞ、うとむ心いできて、なく/\はふりてける」
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
文学にても馬、梅、蝶、菊、文等の語をはじめ一切の漢語を除き候わばいかなるものが出来いでき候べき。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
手水場てうづば出来いできし貫一は腫眶はれまぶたの赤きを連𥉌しばたたきつつ、羽織のひもを結びもへず、つと客間の紙門ふすまひらけば、荒尾は居らず、かの荒尾譲介は居らで、うつくしよそほへる婦人のひと羞含はぢがましう控へたる。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
仰山に唱へ触らし、間には外国人を暗打やみうちにするものなど出来いできて、今のやうに人気の騒ぎ立つは、ただ内の騒動ばかりでない、く人心の片意地なるは世間へ対しても不外聞至極ならずや。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「汝あに最初いやさきに生れたる人ならんや、山よりもさき出来いできしならんや云々」
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
そがかたはらに同じさましたるが火桶に火などおこしつゝ、隣れる人酒の出来いできたるにまゐらずやなど云ふ。今は走りありきて火消さむとはかるものなくて、おのれ/\がゐる所守りてのみあるなるべし。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
うはべは花紅葉もみじのうるはしげなることも二度三度見もてゆくに哀れに淋しきこのなかにもこもり侍る、源氏物がたりを千古の名物とたゝゆるはその時その人のうちあひてつひにさるものゝ出来いできにけん
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
なから舞ひたりしに、御輿みこしたけ愛宕山あたごやまかたより黒雲くろくもにわか出来いできて、洛中らくちゅうにかゝると見えければ、——
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)