出役しゅつやく)” の例文
たしか上林の弥造とか言った角力上りの奴もいるようだが、何ですかい、あの連中、出役しゅつやくは今日だけのことかそれとも……?
斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
番所には見廻り同心賀田杢左衛門もくざえもん、土地の御用聞、赤城の藤八などが、雁字がんじがらめにした林彦三郎をまもって、与力よりき出役しゅつやくを待っているのでした。
かような心配にあずかっては却って迷惑であるという一応の挨拶をした上で、めいめいに膳にむかった。もちろん、出役しゅつやくの武士ばかりではない。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そのあくる日、小林藤十郎殿は本所の名主のうち出役しゅつやくいたし、また其の頃八丁堀にて捕者とりての名人と聞えたる手先二人ににんは業平橋の料理屋にまいりました。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
請取うけとり御番、昼御番、夕御番の三組である。請取御番は早朝に出役しゅつやくして前夜当番の者から御番を受け取る。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「榊原健吉、講武所教授方出役しゅつやく、百俵十人扶持ぶち、下谷三枚橋常楽院裏——と。かようです」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
予が新銭座しんせんざたくと先生のじゅくとは咫尺しせきにして、先生毎日のごとく出入しゅつにゅうせられ何事も打明うちあけ談ずるうち、つね幕政ばくせい敗頽はいたいたんじける。もなく先生は幕府外国方翻訳御用がいこくかたほんやくごよう出役しゅつやくを命ぜらる。
それに本多家、遠藤家、平岡家、鵜殿家の出役しゅつやくがあって、先ず三人の人体にんてい、衣類、持物、手創てきず有無ゆうむを取り調べた。創は誰も負っていない。次に永井、久保田両かち目附に当てた口書を取った。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
これらの外人を保護するため幕府方で外国御用の出役しゅつやくを設置し、三百余人の番衆の子弟をしてそれに当たらせるなぞのことがあればあるほど、多くの人の反感はますます高まるばかりであった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
彼は高輪の弥平という岡っ引の子分の三五郎で、江戸から出役しゅつやくの与力に付いて、二、三年前から横浜へ行っているのであった。それと見て、半七も笑った。
半七捕物帳:59 蟹のお角 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
若い娘の死に恥をさらさせるでもあるまいという町役人のはからいで、検屍前ですが、とにかく取り外して橋番所に運び、諸人のほしいままな眼から遠ざけて、八丁堀役人の出役しゅつやくを待ったのです。
……出役しゅつやくは八州および支配所役人か。(唸って高札をにらんでいる)
斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
『きょうは、出役しゅつやくか』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれは高輪の弥平という岡っ引の子分で、江戸から出役しゅつやくの与力に付いて、去年から横浜に来ているのであった。
半七捕物帳:40 異人の首 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ともかくも一段落を付けたのは辰刻いつつ(午前八時)過ぎ、川一つ距てた組屋敷から、わざわざ同心の出役しゅつやくがあって、検屍を済ませたのは辰刻半、浪花屋の内外は煮えくり返るような騒ぎです。
……出役しゅつやくは八州及び支配所役人か。(唸って高札を睨んでいる)
天狗外伝 斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)