倉庫くら)” の例文
姫の両親ふたおやはそのために、毎日毎日新しいお話の書物を一冊ずつ買ってやったが、今は最早もはやその書物が五ツの倉庫くらに一パイになってしまった。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
君子は倉庫くらのなかにしまってあった抱茗荷紋のある琴のゆたんを外し、お高祖頭巾のようにかぶってその夜、ふけてから未亡人の部屋に忍んで行った。
抱茗荷の説 (新字新仮名) / 山本禾太郎(著)
一番向うにある大きいマロニエは其背景になつて居る窓の少い倉庫くらの樣な七階の家よりも未だすぐれて高い。木の下は青い芝生で、中に砂の白い路が一筋ある。
巴里にて (旧字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
一番向むかうにある大きいマロニエはその背景になつて居る窓のすくな倉庫くらの様な七階の家よりもすぐれて高い。木の下は青い芝生で、中に砂の白い道が一筋ある。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
お肝の虫きりりと騒ぎて、截立きりたてのお衣裳を、お倉庫くらの隅へ、押遣らるるといふお心意気。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
られぬゑん血筋ちすぢといへばるほどの惡戯いたづらつくして瓦解ぐわかいあかつきおちこむは此淵このふちらぬとひても世間せけんのゆるさねば、いへをしくかほはづかしきにしき倉庫くらをもひらくぞかし
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
貯蔵しておく価値のある物は皆その三条の宮の倉庫くらへ納めさせてお置きになった。
源氏物語:38 鈴虫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
の辺は皆垣が石のような処で、其処そこ切穿きりほりまして穴蔵ような物が山の半腹はんぷくにありまして、まる倉庫くらの様になって居りますから、縁側を伝わって段々手索てさぐりでくと、六畳ばかりの座敷がありまして
それから小舎こやのすぐ横の岩の横腹を、ボートの古釘で四角に掘って、小さな倉庫くらみたようなものを作りました。
瓶詰地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
切られぬ縁の血筋といへば有るほどの悪戯いたづらを尽して瓦解ぐわかいの暁に落こむはこのふち、知らぬと言ひても世間のゆるさねば、家の名をしく我が顔はづかしきに惜しき倉庫くらをも開くぞかし
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
家の名をしく我が顏はづかしきに惜しき倉庫くらをも開くぞかし、それを見込みて石之助、今宵を期限の借金が御座る、人の受けに立ちて判を爲たるもあれば、花見のむしろに狂風一陣
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)