俸禄ほうろく)” の例文
それから僧侶及び普通政府の役人、あるいは政府の仕事をする職工とか商業家等に俸禄ほうろくを与える時分には普通の枡ではかってやるです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
新政府にし、維新功臣の末班まっぱんに列して爵位しゃくいの高きにり、俸禄ほうろくゆたかなるにやすんじ、得々とくとくとして貴顕きけん栄華えいが新地位しんちいを占めたるは
位階は四位、職級は、四等官で、国司の下にはなるが、一国の知事であり、もちろん、任地にはかず、京にあって、俸禄ほうろくだけを受けるのである。
妻君が自分の傍を遠退くのは漂泊のためであろうか、俸禄ほうろくてるためであろうか。何度漂泊しても、漂泊するたびに月給が上がったらどうだろう。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
目ざめて見れば六十五石の俸禄ほうろくになっていた。士籍をがれた家臣七百六十余名は、数千の家族とともに一挙に土民となされ、路傍に投げだされた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
おのれは俸禄ほうろくに飽きたりながら、兄弟はらから一属やからをはじめ、六七みおやより久しくつかふるものの貧しきをすくふわざをもせず、となりにみつる人のいきほひをうしなひ
本名を内海文三うつみぶんぞうと言ッて静岡県の者で、父親は旧幕府に仕えて俸禄ほうろくはんだ者で有ッたが、幕府倒れて王政いにしえかえ時津風ときつかぜなびかぬ民草たみぐさもない明治の御世みよに成ッてからは
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
俸禄ほうろくを受ける者は知らず知らずのうちに心まで自分の主人のためにうばわれることはありはせぬか。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
阿部弥一右衛門は故殿様のお許しを得ずに死んだのだから、真の殉死者と弥一右衛門との間には境界をつけなくてはならぬと考えた。そこで阿部家の俸禄ほうろく分割の策を献じた。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
宝暦十一年に俸禄ほうろくを辞してからはどこにも仕えなかったので、なかには彼を招こうとする諸侯もいろいろあったのでしたが、特別な仕事のほかはそれに応じなかったとうことです。
平賀源内 (新字新仮名) / 石原純(著)
連年海陸軍の兵備を充実するために莫大ばくだいな入り用をかけて来た旧幕府では、彼らが知行ちぎょうの半高を前年中借り上げるほどの苦境にあったからで。彼ら旗本方はほとんどその俸禄ほうろくにも離れてしまった。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いずれもシナ政府の俸禄ほうろくを貰うばかりでなくまたチベット政府からも手当があります。随分収入は多いと見えて立派に生活して居るです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「劉皇叔の二夫人、御嫡子、そのほか奴婢ぬひどもにいたるまで、かならずその生命と生活の安全を確約していただきたいことでござる。しかも鄭重なる礼と俸禄ほうろくとをもって」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
陰口かげぐちをいう者の人格の下劣げれつにして、いささか俸禄ほうろくのために心の独立を失い、口に言わんと欲することを言わず、はなはだしきは心に思わんと欲することさえも、まったく思わず
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
また大蔵省から取立とりたてた内で、法王政府に属する諸官員及び僧官に俸禄ほうろく(年俸と月俸とあり)を与えなければならん。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
また使わるる人の心にも同じくこの思想が存在しておりはせぬか。換言すれば俸禄ほうろくをもって他人の身体をおさえる者は、心そのものをも制し得る考えをもってする者が多くありはせぬか。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)