俯視ふし)” の例文
すすむこと一里半にしてきふ暖気だんきかんず、俯視ふしすれば磧礫間温泉おんせんありて数ヶ所にづ、衆皆くわいぶ、此処はあざはな或は清水沢しみづさはと称し
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
今は温泉場として知られて居るが、当時は城が有ったものと見える。政宗は本軍を飯坂に据えて、東のかた南北に通って居る街道を俯視ふししつつ氏郷勢を待った。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
夫人の美しくれたる目の深黒なる瞳は、極めて靜かに極めて重く、我面を俯視ふしす。若し人ありて、此時我等二人を窺ひたらんには、われその何のことばもてこれを評すべきを知らず。
只管ひたすら写真機械をたづさへ来らざりしをうらむのみ、いよ/\溯ればいよ/\奇にして山石皆凡ならず、右側の奇峰きばうへて俯視ふしすれば、豈図あにはからんや渓間けいかんの一丘上文珠もんじゆ菩薩の危坐きざせるあり
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
こゝの舞台は隅田川を俯視ふしすべくして、月夜の眺望ながめ四季共に妙に、雪のあしたに瓢酒ひさござけを酌んで、詩を吟じ歌を案ぜんはいよ/\妙なり。仙骨あるものは登臨の快を取りて予が言の欺かざるを悟るべし。
水の東京 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
加ふるに石南しやくなん蟠屈ばんくつ黄楊つけ繁茂はんもとを以てし、難いよ/\難を増す、俯視ふしして水をもとめんとすれば、両側断崖絶壁だんがいぜつぺき、水流ははるかに数百尺のふもとるのみ、いうしてはやく山頂にいたらんか
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)