住持じゅうじ)” の例文
然し此れが寺だとすれば、住持じゅうじは恐ろしく悟の開けぬ、煩悩満腹、貪瞋痴どんじんちの三悪を立派に具足した腥坊主なまぐさぼうずである。彼は好んで人をう。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
どうしてということもござらぬが、代々の住持じゅうじも、ついそれは持たなかったものとみえまする。……いやいかん、矛盾しますな、自分の言と。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「来月の祖母さんの十三回忌までには、お住持じゅうじさんは戻ってくるのじゃろうか」と母親が口を出した。
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
大正某年の某月が丁度その五十年になったので、その時の住持じゅうじは錠前を打破うちこわして篋をあけて見た。
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
アア、養源寺ようげんじですか。あすこはあなた妙なお寺でございましてね、お住持じゅうじお一人切りなんですよ。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
浅草あさくさの或る寺の住持じゅうじまだ坊主にならぬ壮年の頃あやまつ事あって生家を追われ、下総しもうさ東金とうかねに親類が有るので、当分厄介になる心算つもり出立しゅったつした途中、船橋ふなばしと云う所である妓楼ぎろうあが
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
人皇にんのう百十一代霊元天皇の延宝五年丁巳ひのとみ霜月しもつき初旬に及んで其業おわるや、京師の本山より貧道ひんどうを招き開山住持じゅうじの事を附属せむとす。貧道、寡聞かもん浅学の故を以て固辞再三に及べども不聴ゆるさず
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「さよう、十日に一度ずつ、良源院の住持じゅうじが来て、講義をされております」
またその住持じゅうじの紹介を得て、素人しろうとの家に置いてもらうことになった。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
住持じゅうじといっても木綿もめん法衣ころもたすきを掛けて芋畑いもばたけ麦畑で肥柄杓こえびしゃくを振廻すような気の置けないやつ、それとその弟子の二歳坊主にさいぼうずがおるきりだから、日に二十銭か三十銭も出したら寺へ泊めてもくれるだろう。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
日蓮の生れた村だから誕生寺とでも名を付けたものでしょう、立派な伽藍がらんでした。Kはその寺に行って住持じゅうじに会ってみるといい出しました。実をいうと、我々はずいぶん変な服装なりをしていたのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「寺に大地小地なく、住持じゅうじに大地小地あり。」
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
沢庵をへいして開堂供養を営もうとしたが、沢庵はこれより先、寛永十六年に品川の東海寺に入っていたので、同門の耆宿啓室座元を代らしめて住持じゅうじとなし、亡き道友の冥福を祈らせた。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
納所なっしょにも住持じゅうじにも、坊主はまだ一人も出て来ないんだ」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「お住持じゅうじはお留守かね」
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
すると、それから後、いく度か、ここの住持じゅうじをそっと訪ねて来た浪人者がある。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
住持じゅうじはおるか」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)