“乃(すなはち)” の例文
膏血(かうけつ)淋漓(りんり)たり。下に承くるに盆を以てす。盆満つれば即ち巨桶中に挹注(いふちう)す。是(かく)の如きもの十余次。巨桶乃(すなはち)満つ。数人之を扛して出づ。官文書を判して一吏に付し、与(とも)に同じく出づ。
鴉片 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
径(わたり)一尺五六寸なり。往年此村長(むらのをさ)社前の石階を造りてなれり。名を後世にのこさんことを欲してこのものを造りおけり。乃(すなはち)其家の紋なりと社主かたる。門前に上野信濃国界の碑あり。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
人(ひと)ありて能(よ)く我(われ)に學(まな)ばば、同(おなじ)くともに仙葩(せんぱ)を看(み)ん、と且(か)つ歌(うた)ひ且(か)つ花(はな)の微紅(びこう)を噛(か)む。昌黎(しやうれい)敢(あへ)て信(しん)ぜず。韓湘(かんしやう)又(また)館(やかた)、階前(かいぜん)の牡丹叢(ぼたんさう)を指(ゆびさ)して曰(いは)く、今(いま)、根(ね)あるのみ。叔公(をぢさん)もし花(はな)を欲(ほつ)せば、我(われ)乃(すなはち)開(ひら)かしめん。
花間文字 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
直にのぼる山乃(すなはち)勝山なり。一山みな岩石也。斫(きり)て坂となし坦路となしゝものあり。窟の観音に詣る。佳境絶妙なり。河幅至てひろく、水心に岩石秀聳(しうしよう)し、蟠松矯樹(はんしようあいじゆ)ううるがごとく生ず。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
乃(すなはち)庾子亮蟹譜(ゆしりやうかいふ)に載する蟹殻如人面(じんめんのごと)きものありと称するものなり。午後風収(をさまり)雨霽(はる)。すなはち撫院の船に陪乗す。船大さ十四間幅五六間。柁工(たこう)三十余人。一堂に坐するごとし。少も動揺をおぼえず。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)