主題テーマ)” の例文
先王ステファン五世の薨去の間もなく起こりうる政変といえば、いうまでもなくエレアーナ王女の登位を主題テーマにしたものに相違ない。
墓地展望亭 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
たとえば第一の部分がある旋律によって表わされた一つの主題テーマであるとすれば、第二の部分はこれと照応しまた対比さるべきものであり
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
歓喜フロイデ」の決定的主題テーマはベートーヴェンがこれを『第九』のすべての合唱の主題とともに(ただしもっと後にできた三重唱トリオだけは別であるが)
それはキーツにもあり、シエレーにもあり、ポオやボードレエルの中にさへも、冬の季節に関する限り、必ず抒情詩の本質的な主題テーマになつてる。
冬の情緒 (新字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
ことに吾輩が研究の主題テーマとして選んだ材料を、今の学者の流儀で名付けると、遺伝性、殺人妄想狂、早発性痴呆、兼、変態性慾とも名付くべき
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それから、第一主題テーマが、恰であそびだ。魂に触れる何物もないぢやないか。何らの象徴シムボルがない。……憧憬もない、と云つてまた倦怠アンニユーのメランコリアもない。
眠い一日 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
郷愁を主題テーマとしたスウィスの民謡を聞いて、あのやるせない曲に涙を落さないものは、山に縁の遠い人間だ、スウィス国民の中の狂人か白痴に等しい部類だ
その翌年の二月、條野採菊じょうのさいぎく翁が伊井蓉峰いいようほう君に頼まれて「茲江戸子ここがえどっこ」という六幕物を書くことになった。故榎本武揚えのもとたけあき子爵の五稜郭ごりょうかく戦争を主題テーマにしたものである。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
手堅くしかも底光りのするあいつの技巧が、またぐんぐん俺をやっつけてしまった。ことに主題テーマは前の「顔」のそれに勝るとも決して劣らぬほどの光ったものだった。
無名作家の日記 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
作曲の練習課題として主題テーマを与え、なるべく多くの対位法的変奏曲を書くことを命ずると、せいぜい十二曲くらいを期待しているところへ、二百余りの変奏曲を作って
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
英訳で読みました。主題テーマがそう優れているとは思いませんでしたが、人物の性格は大変面白く感じられました。タニジャーキという作家はどのくらいの地位の人でしょうか?
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
原注そのものが重要性をもっており、その後のロランのベートーヴェン研究の中で考証されたり展開されたりした問題がこれらの原注の中にいわば音楽の主題テーマのように散在している。
斯様な主題テーマに就いて研究を初めました抑々そもそもの動機と申しますのは、正木先生の唱え出された『精神科学』そのものの内容が、あまりに恐怖的な原理
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
初めのうちは終曲フィナーレ(66)宣叙調レチタティーフのみか「歓喜」の主題テーマそのものをさえ器楽とすることに決めていた。
この戯曲の主題テーマには、少し自信がある。が、俺のペンから出てくる台詞せりふは月並みの文句ばかりだ。
無名作家の日記 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「それが、つまり、今、彼が書き続けてゐる仕事の主題テーマとなつてゐるわけなんですが……」
南風譜 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
蕪村特有の人情味の深い句であるが、単にそれのみでなく、作者が自ら幼時の夢を追憶して、亡き母へのわびしい思慕を、遠い郷愁のように懐かしんでる情想の主題テーマを見るべきである。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
この奔騰ほんとうする天才の奇蹟きせきは、第一交響曲の完成に十年を要し、第九交響曲の合唱部の主題テーマを三十年ノートに秘めておいた、ベートーヴェンの努力ぶりと比較して、なんという興味の深い相違であろう。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
歓喜の主題テーマが始めて現われようとする瞬間に、オーケストラは突如中止する。急な沈黙が来る。歓喜の歌の登場へ、この沈黙が一つの不思議な神々しい性格を与える。
が、主題テーマを借りたのはいいとして、あの作品の全体にわたっている低級な感傷主義は、一体なんだ! 君は高等学校の一年生時代から、思想的には一歩も進歩していないね。
無名作家の日記 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
さようで……しかし単にそれだけでは、余りに眼新しい主題テーマで御座いますから、内容がお解かりにならぬかも知れませぬが、斯様かよう申上げましたならば大凡おおよそ、御諒解が出来ましょう。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
厭な、悲しい主題テーマだ、御免だ! と思ふ。慌てて森を駆け抜けようとする。
駆ける朝 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
こうした郷愁詩の主題テーマとして、蕪村は好んで藪入の句を作った。例えば
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
あなたの変奏曲ヴァリアチオン主題テーマをひくことがヴェーゲラーの大きな楽しみです。以前の方を好んでひいておりますが、しかし新しい方の中の一曲もたいへんな根気でひいております。
その主題テーマは大きくて反覆的で、衝角ベリエ〔(訳者注——古代の戦闘に城の障壁を突破するために用いられたもの)〕のように投げ飛ばされ、石の切れっぱしのように、くうにかかった物体のように
いつも厭味いやみたらしい感傷的な主題テーマを与えた。
Gustav Nottebohm.——Thematisches Verzeichnis der im Druck erschienenen Werke von Ludwig van Beethoven, 1868, Leipzig. グスターフ・ノッテボーム——『ベートーヴェンの、出版されている作品の主題テーマ索引目録』(一八六八年)
Gustav Nottebohm: Thematisches Verzeichnis der im Druck erschienenen Werke von Ludwig van Beethoven, zweite vermehrte Auflage, 1868, Leipzig, Breitkopf. グスターフ・ノッテボーム——『ベートーヴェンの、出版されている作品の主題テーマ索引目録』(増補された第二版、一八六八年)