三抱みかかえ)” の例文
背戸口せどぐちは、充満みちみち山霧やまぎりで、しゅうの雲をく如く、みきなかばを其の霧でおおはれた、三抱みかかえ四抱よかかえとちが、すく/\と並んで居た。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おまけに二抱ふたかかえから三抱みかかえぐらいの天然の松林の中にあって、ろくろく日の目を見ることも出来ず、からすふくろうの巣であった。
青い絨毯 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
勝った獲物を二抱ふたかかえ三抱みかかえも、物置ものおきすみにしまっておいて、風呂ふろのしたにかれてがっかりした記憶も自分にはある。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
上には三抱みかかえほどの大きな松が、若蔦わかづたにからまれた幹を、ななめにねじって、半分以上水のおもてへ乗り出している。鏡をふところにした女は、あの岩の上からでも飛んだものだろう。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すぐその御手洗のそばに、三抱みかかえほどなる大榎おおえのきの枝が茂って、檜皮葺ひわだぶきの屋根を、森々しんしんと暗いまで緑に包んだ、棟の鰹木かつおぎを見れば、まがうべくもない女神じょしんである。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
聞くところによるとこの界隈かいわいで寂光院のばけ銀杏と云えば誰も知らぬ者はないそうだ。しかし何がけたって、こんなに高くはなりそうもない。三抱みかかえもあろうと云う大木だ。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
侍女五 (最もわかし。ひとしく公子の背後に附添う。派手にうるわしき声す)月の灘の桃色の枝珊瑚樹、ついの一株、丈八尺、周囲まわり三抱みかかえの分。一寸の玉三十三粒……雪の真珠、花の真珠。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ここに三抱みかかえに余る山桜の遠山桜とて有名なるがござ候。その梢より根に至るまで、枝も、葉も、幹も、すべて青き色の毛布にておおひ包みて、見上ぐるばかり巨大なる象の形にこしらへ候。
凱旋祭 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
思わず胸に縋るお雪の手を取ってたすけながら、行方をにらむと、谷を隔ててはるかに見えるのは、杉ともいわず、とちともいわず、ひのきともいわず、二抱ふたかかえ三抱みかかえに余る大喬木だいきょうぼくがすくすく天をさして枝を交えた
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(この分、手にて仕方す)周囲まわり三抱みかかえの分にござりまして。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)