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一脈
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いちみゃく
「たとへ
法然上人にすかされまゐらせて念仏して
地獄におちたりとも、さらに
後悔すべからずさふらふ」という
親鸞の言葉と、
一脈相通ずるところがあるからなのかもしれない。
唯見れば池のふちなる
濡れ土を、五六寸離れて立つ霧の中に、
唱名の声、
鈴の音、深川木場のお柳が姉の
門に
紛れはない。
然も
面を打つ
一脈の
線香の
香に、学士はハッと我に返った。
静かなる事
定って、静かなるうちに、わが
一脈の命を
託すると知った時、この
大乾坤のいずくにか
通う、わが血潮は、
粛々と動くにもかかわらず、音なくして
寂定裏に
形骸を
土木視して
頭巾黒く、
外套黒く、
面を
蔽ひ、
身躰を包みて、長靴を
穿ちたるが、
纔に
頭を動かして、
屹とその感謝状に眼を注ぎつ。
濃かなる
一脈の煙は
渠の
唇辺を
籠めて
渦巻きつつ
葉巻の
薫高かりけり。