一杯いっぺえ)” の例文
庄「まア/\宜い、若衆わけいしさん、買う買わねえは兎も角も一杯いっぺえ此処で飲みねえ、おめえも何だろう、腹からの車挽くるまひきじゃアあるまいうちは何処だい」
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
こうやって自分の手にかけたお座敷で、兄弟分きょうでえぶんがこしれえたお庭を眺めながら、旦那様のお相伴しょうばんをして一杯いっぺえ頂戴出来るなんて職人冥利みょうりの行止まりでげしょう。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その蓋を開けるてえと、中には綿が一杯いっぺえ詰まってるはずだ……と。ほうらこれも間違いなく、そのとおりだ
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
野郎、これで一杯いっぺえって来い、なんかと時々親方が投げてくれる金銭で衣食している連中——が、開始前、手に手にほうきを持って、中央の大円庭に砂をならしている。
オイ飯を食わしてくれろッてえんで帰っての今朝けさ自暴やけ一杯いっぺえ引掛ひっかけようと云やあ、大方男児おとこは外へも出るに風帯ふうてえが無くっちゃあと云うところからのことでもあろうが
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
とっつぁんと一杯いっぺえろうと思ってな、酒を二升ばかりさげて来たよ」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
新「明日あしたはまた大生郷辺で一杯いっぺえ遣って日を暮さなければ成らねえ、仕方がねえから今日はうちに寝ようと思って」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いか、わしも筏乗で力業ちからわざすきだから時々来て一緒にやる事もあるから……旦那さま実に此の子ぐれえ感心な者はありませんよ、私イハア胸え一杯いっぺえになりやしたが
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
庄「あゝ其方そっちの二畳の部屋の方へ出して置いてくれ、穢らしいから……おい一杯いっぺえ酒を飲もう」
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
兄イ兄イ…おっかさん黙っておいでなさい…兄イ此処ここじゃア話が出来ねえから台所へ往って話をしよう、おれは番場の森松と云う者で、悪い事は腹一杯いっぺえやって、今は此方の旦那のうち食客いそうろう
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一杯いっぺえ飲んで図に乗っていうのだ、エヽ、おい、それでねえ、マア一杯飲んでけえった処が、銭イなえと云うから、無くったっていや、なんでもお賤さんのとこへ行ってお呉んなせえというと
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
舁夫「どうせ船橋へかえりですが、おやすねげえもんで、けえりですから一杯いっぺえ飲めりゃア宜いんで、けえり駕籠でござえやすから、お安く乗っておくんなせえ、まだ船橋まで余程よっぽど有りますぜ」
馬「ばアさま、お茶ア一杯いっぺえくんねえ、今の、お客を一人新高野しんこうやまでのっけて来た」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
なんだ金太きんたの野郎が酒が強いからあにいもう一杯いっぺいやんねえと云った、いゝなアけんでは負けねえが酒では負けるな、もう一杯いっぺい大きいので、もう一杯いっぺえという、悔しいやん畜生かなわねえ、滅法やった
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あゝ何うも胸がドキ/\して気が落着かねえ、水を一杯いっぺえくれねえか
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)