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しほざけ
入口にはいつもの魚屋があつて、
塩鮭のきたない俵だの、くしやくしやになつた
鰯のつらだのが台にのり、軒には赤ぐろいゆで
章魚が、五つつるしてありました。
勘次は
小屋で
卯平が
鹽鮭を
燒く
臭を
嗅いでは一
種の
刺戟を
感ずると
共に
卯平を
嫉むやうな
不快の
念がどうかすると
遂起つた。
猫は
辛い
鹽鮭を
與へれば
腰が
利かない
病氣に
罹ると一
般にいはれて
居るので
卯平が
腰を
惱んで
居るのを
稀には
猫の
祟だと
戯談にいふものもあつた。それでもさういふ
噂は
擴がらなかつた。