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いつせ
其の
実、
矢叫の
如き
流の
音も、
春雨の
密語ぞ、と
聞く、
温泉の
煙りの
暖い、
山国ながら
紫の
霞の
立籠る
閨を、
菫に
満ちた
池と見る、
鴛鴦の
衾の
寝物語りに——
主従は
三世、
親子は
一世
夫は
蓑笠稿脚衣すんべを
穿(
晴天にも
簑を
着は雪中
農夫の常也)
土産物を
軽荷に
担ひ、
両親に
暇乞をなし
夫婦袂をつらね
喜躍て
立出けり。
正是親子が
一世の
別れ、
後の
悲歎とはなりけり。
『それでは
二人で、
一世か、
二世か
賭をしやう。』
ここに
登美毘古と戰ひたまひし時に、
五瀬の命、御手に登美毘古が
痛矢串を負はしき。