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あくえん
惡縁慘く
破れて
身を
宿怨と
共に
埋む。
跡にして
遙々と父の故郷は
熊本と聞
海山越て此處迄は參り候へ共
何程尋ても未だ父の
在所が
知申さず
何成過去の
惡縁にて斯は兩親に
縁薄く
孤子とは成候かと
潸然々々と
泣沈めば
餠屋の亭主も
貰ひ
泣し
偖々幼少にて氣の毒な
不仕合者かなと
頻に
不便彌増偖云やう其方の父は熊本と
計りでは當所も
廣き
城下なれば分るまじ父の名は
然ればな……いや
口の
減らぬ
老爺、
身勝手を
言ふが、
一理ある。——
処でな、あの
晩四つ
手網の
番をしたが
悪縁ぢや、
御身が
言ふ
通り
色恋の
捌を
頼まれた
事と
思へ。