態度たいど)” の例文
乳牛はすこしがたがた四を動かしたが、飼い葉をえて一しんいはじめる。花前は、いささか戒心かいしん態度たいどをとってしぼりはじめた。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
本艦ほんかん一令いちれいした推進螺旋スクルーなみつて進航しんかうはじめた。規律きりつたゞしき軍艦ぐんかん甲板かんぱん、かゝる活劇さわぎあひだでもけつしてその態度たいどみだやうことはない。
その予備知識よびちしきがあつて、ことさらにたずねてみたのだから、自然しぜんにこちらも、注意ちゅういぶかくこの重役じゅうやく態度たいど観察かんさつしていたわけである。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
めいめいは紙片に候補者こうほしゃの名をしるして箱に投ずることとなった。ゴルドンは英国人特有のげんしゅくな態度たいどで選挙長のいすについた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
もともと天下を我家と心得て和上わじやうは岡崎の土地などを眼中に置いて居ない所から、在所の者に対して横柄わうへい態度たいども有つたに違ひ無い。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
森川君のことなんか眼中がんちゅうにないのだと自分に向かっていいました。それでいながら、森川君がどういう態度たいどをとるかが気にかかっています。
決闘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
あっさりとさばけた態度たいどで、そうわれましたので、わたくしほうでもすっかり安心あんしんして、おもうかぶまま無遠慮ぶえんりょにいろいろなことをおききしました
話をしてしまうと、わたしはほとんど優しくなっていたかれの態度たいどから、すぐにもわたしたちを放免ほうめんしてくれるかと思った。
蓬々ぼう/\けたかみくしれてつめたいみづれたときおつぎはやうや蘇生いきかへつたやうになる。それでもはまだあかくて態度たいどがふら/\と懶相だるさうである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
不幸ふかうにしていま小六ころくは、このあによめ態度たいどたいしてほど調子てうしだけ餘裕よゆう分別ふんべつあたまうち發見はつけんなかつたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
では、如何いかんだらいゝかとへば、これも、多少たせうひとつてちがふかもれないが、かく何者なにものにもわづらはされずに、正直しやうぢき態度たいどむがいゝ。
読書の態度 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ほしは、きゅうに、いかけられて、いそがしそうにまたたきをしました。それから、じっと態度たいどまして、おちついた調子ちょうし
美しく生まれたばかりに (新字新仮名) / 小川未明(著)
あまつさドアには、觀世綟くわんぜよりぢやうもさゝず、一壓ひとおしにせばくものを、ときまで美少年びせうねんくだん自若じじやくたる態度たいどつゞけた。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おかみさんは、主人しゅじんきゃくのことを言いだすと、できるだけひややかな態度たいどをとり、いかにもりこうぶった口ぶりで
だれもうたがおうとしない態度たいどを見ると、先生は、上陸じょうりく第一歩で今日の目的をはっきりさせるべきだったと思った。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
これは近時きんじ建築けんちくたいする世人せじん態度たいどきはめて眞面目まじめになり、徹底的てつていてき建築けんちく根本義こんぽんぎ解決かいけつし、れから出發しゆつぱつして建築けんちくおこさうとかんがへからたことで
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
あね小柄こがらの、うつくしいあいらしいからだかほ持主もちぬしであつた。みやびやかな落着おちついた態度たいど言語げんごが、地方ちはう物持ものもち深窓しんそうひととなつた処女しよぢよらしいかんじを、竹村たけむらあたへた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
俗に「くそ味噌みそも一しょにする」というが、味噌みそを見てくそのようだというのと、糞を見て味噌のようだというのとは、その人の態度たいどに大差あるを証明する。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
だから近頃ちかごろうた文學ぶんがくうへからは、かういふ態度たいどはよいとはいへないが、それにしてもつくつたものが相當そうとうによければ、やはりよいといふよりほかはありません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
と進みよった態度たいどはいかにもおちついていた。子分の横田篠崎小川の三名も、かばんをはずして支度をした。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ちいさな飼主かひぬしのないねこ、まだ純眞じゆんしん態度たいどひとおそれないのみか、ひとなつかしい調子てうしつてくる。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
運動場うんどうばへ出て来ても我々われ/\の仲間にはいつた事などは無い、超然てうぜんとしてひとしづかに散歩してるとつたやうなふうで、今考へて見ると、成程なるほど年少詩人ねんせうしじんつた態度たいどがありましたよ
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
このことばに人々はM大尉エムたいい発狂はっきょうしたのではないかと思いました。けれども自信ある態度たいどにおかすべからざる威厳いげんがありましたから、審判官しんぱんかんは、大尉たいいのねがいをききました。
国際射的大競技 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
しかも、そればかりではなく、ひたいは高くこぶのようになっていて、目は、りこうそうで、態度たいどはじつにりっぱです。いかにも、どうどうたる勇敢ゆうかんな動物のように見えます。
いま乞食坊主こじきばうずたのになつたのは、なんとなくえらさうにえる坊主ばうず態度たいどしんおこしたのと、みず一ぱいでするまじなひなら間違まちがつたところ危險きけんこともあるまいとおもつたのとのためである。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
平日へいじつ教場きようじよう出入しゆつにゆうするのとあまちがはない態度たいど校庭こうていあらはることが出來できたであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
すると谷博士は、口をかたく結んで、それは絶対に答えないぞという態度たいどを示した。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ぼくはおきぬなしをむいて、ぼくひとりいつてる浴室よくしつに、そつともつれたことをおもひ、二人ふたり溪流けいりう沿ふて散歩さんぽしたことをおもひ、そのやさしい言葉ことばおもひ、その無邪氣むじやき態度たいどおもひ、その笑顏ゑがほおも
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ごくわずかのしつけは経験上必要だが、今の学校の先生や父兄がたが強くしつける態度たいどを執ったり、開明的と自信する人々が、「外国では子供をしっかりしつけますよ」と真理しんりの如く宣言されると
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
きみながらおにく態度たいど! とひそかに思いうらまれる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただうろついている。源四郎はもとより悪気わるぎのある男ではない。祖母の態度たいど不平ふへいがあるでもなく、お政の心中しんちゅうを思いやる働きもない。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
くまのように魁偉かいいな男ではあるが、どことなくものやさしい、目は正直しょうじきそうな光をおびている、一同はかれの態度たいどになにかしら心強さを感じた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
さうかとおもつてうち村落中むらぢう勘次かんじのおつぎにたいする態度たいどまつた以前いぜんかへつたことをみとめずにはられなくなつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
親方はれいのもっとも『紳士しんし』らしい態度たいどを用いて、ぼうしを頭にのせたまま、首を後ろにあお向けて、宿屋やどや亭主ていしゅにいいねどことあたたかい火をもとめた。
かへつて主人しゆじんくち子供こども煩冗うるさがるわりに、すこしもそれをにする樣子やうすかほにも態度たいどにもえないのをうらやましくおもつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
どうせ一あふちこずゑに、けるくびおもつてゐますから、どうか極刑ごくけいはせてください。(昂然かうぜんたる態度たいど
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
これも生活上における表裏の一つではないか。かく時に応じてその態度たいどを改むることは、いて偽君子ぎくんしの行為といわんよりは、むしろ世上における普通の礼である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ほこりでよごれきったトーマスの服装ふくそうに、金貨の音はどう考えてもつかわしくなかったからだ。しかし、その船員せんいんは、すぐに前とおなじあけっぴろげな態度たいどになって
こうは、すました態度たいどで、なかなか、それにこたえようとしませんでした。おつが、まず自分じぶんから
ひとをたのまず (新字新仮名) / 小川未明(著)
多分たぶん彼等かれらつてはたのしい一であるべきはずだつたのであらうがおしのやうにだまりこくつた我々われ/\にが表情へうぜう無愛相ぶあいそう態度たいどとが、如何いか彼等かれら失望しつぼうさせたかは、想像そうぞうあまりあるものであつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
最後さいごに一ごんしてきたいのは筆録ひつろく責任者せきにんしゃとしてのわたくし態度たいどであります。
これよりさき雪枝ゆきえ城趾しろあと濠端ほりばたで、老爺ぢいならんで、ほとん小学生せうがくせい態度たいどもつて、熱心ねつしんうをかたちきざみながら、同時どうじ製作せいさくしはじめた老爺ぢい手振てぶりるべく……そつ傍見わきみして、フトらしたとき
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
全體ぜんたいなかひとの、みちとか宗教しうけうとかふものにたいする態度たいど三通みとほりある。自分じぶん職業しよくげふられて、たゞ營々役々えい/\えき/\年月としつきおくつてゐるひとは、みちふものをかへりみない。これは讀書人どくしよじんでもおなことである。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
と、いずれもりっぱな態度たいど会釈えしゃくをした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と先生はごくおだやかな態度たいどできいた。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
何處どこ人懷ひとなつこいところがあつて只管ひたすら他人たにん同情どうじやうかつしてたおしなはゝ何物なにものをかもとめるやうな態度たいどやうや二人ふたりちかづけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
糟谷かすやはくるしく思うけれど、平生へいぜい心おきなくまじわった老人であるから、そうきびしくことわれない、かつまたあまりにわかにわった態度たいどをして
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「人をうたがうことは日本人のもっともむところだ。だが、ぼくはドノバン君の態度たいどを見るに、なにごとかひそかにたくらんでいるように疑えてならないんだ」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
主人しゆじんとし送迎そうげいわづらはしいやうことつたが、その態度たいどには何處どこしてくさ/\したところみとめられなかつた。言葉遣ことばづかひ活溌くわつぱつであつた。かほはつや/\してゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
見物に向かってはありったけのにこやかな態度たいどを示しながら、この問題がしじゅうわたしのむねを打った。