鼠木綿ねずみもめん)” の例文
二度目に眼がめた時、彼は驚ろいて飛び起きた。縁側えんがわへ出ると、宜道ぎどう鼠木綿ねずみもめんの着物にたすきを掛けて、甲斐甲斐かいがいしくそこいらを拭いていた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
九郎右衛門は花色木綿の単物ひとえものに茶小倉の帯を締め、紺麻絣こんあさがすりの野羽織を着て、両刀を手挟たばさんだ。持物は鳶色とびいろごろふくの懐中物、鼠木綿ねずみもめんの鼻紙袋、十手早縄はやなわである。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
のぞいてみると、意外、中には二ツの天蓋と、二掛ふたかけの掛絡けらくと、鼠木綿ねずみもめんの小袖や手甲てっこうまでがふたり分?
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
度目どめめたときかれおどろいてきた。縁側えんがはると、宜道ぎだう鼠木綿ねずみもめん着物きものたすきけて、甲斐々々かひ/″\しく其所そこいらをいてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
鼠木綿ねずみもめん手甲脚絆てっこうきゃはん掛絡けらく天蓋てんがい。いうまでもなく虚無僧である。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
禅師はとくとの上で見済ました末、それではき足らぬと考えたと見えて、鼠木綿ねずみもめんの着物のそでを容赦なく蜘蛛くもの背へこすりつけて、光沢つやの出た所をしきりに賞翫しょうがんしている。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
たしかに、天蓋てんがい、わらじ、鼠木綿ねずみもめんついの姿——。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宜道は鼠木綿ねずみもめんの上に羽織はおっていた薄い粗末な法衣ころもを脱いでくぎにかけて
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
宜道ぎだう鼠木綿ねずみもめんうへ羽織はおつてゐたうす粗末そまつ法衣ころもいでくぎけて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)