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鼠木綿
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ねずみもめん
二度目に眼が
覚めた時、彼は驚ろいて飛び起きた。
縁側へ出ると、
宜道が
鼠木綿の着物に
襷を掛けて、
甲斐甲斐しくそこいらを拭いていた。
九郎右衛門は花色木綿の
単物に茶小倉の帯を締め、
紺麻絣の野羽織を着て、両刀を
手挟んだ。持物は
鳶色ごろふくの懐中物、
鼠木綿の鼻紙袋、十手
早縄である。
のぞいてみると、意外、中には二ツの天蓋と、
二掛けの
掛絡と、
鼠木綿の小袖や
手甲までがふたり分?
二
度目に
眼が
覺めた
時、
彼は
驚ろいて
飛び
起きた。
縁側へ
出ると、
宜道が
鼠木綿の
着物に
襷を
掛けて、
甲斐々々しく
其所いらを
拭いてゐた。
鼠木綿の
手甲脚絆に
掛絡、
天蓋。いうまでもなく虚無僧である。
禅師はとくと
掌の上で見済ました末、それでは
飽き足らぬと考えたと見えて、
鼠木綿の着物の
袖を容赦なく
蜘蛛の背へこすりつけて、
光沢の出た所をしきりに
賞翫している。
たしかに、
天蓋、わらじ、
鼠木綿の
対の姿——。
宜道は
鼠木綿の上に
羽織っていた薄い粗末な
法衣を脱いで
釘にかけて