飜々ひらひら)” の例文
新字:翻々
白熱した日盛ひざかりに、よくも羽が焦げないと思う、白い蝶々の、不意にスッと来て、飜々ひらひらと擦違うのを、吃驚びっくりした顔をして見送って
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
出島でじまに近い船繋場ふなつきばには、和船に混って黒塗三本マスト阿蘭陀オランダ船や、ともの上った寧波ニンパオ船が幾艘となく碇泊し、赤白青の阿蘭陀オランダの国旗や黄龍旗こうりゅうき飜々ひらひらと微風になびいている。
白熱した日盛ひざかりに、よくも羽が焦げないと思ふ、白い蝶々ちょうちょうの、不意にスツと来て、飜々ひらひら擦違すれちがふのを、吃驚びっくりした顔をして見送つて
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
屋根から屋根へ、——樹のこずえから、二階三階が黒烟りにただよう上へ、飜々ひらひらと千鳥に飛交う、真赤まっかな猿の数を、く行く幾度も見た。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ふと鼠色の長い影が、幕を斜違はすっかいに飜々ひらひらと伝わったり……円さ六尺余りの大きな頭が、ぬいと、天井にかぶさりなどした。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大提灯にはたはたとつばさの音して、雲は暗いが、紫の棟の蔭、天女もこもひさしから、鳩が二三羽、と出て飜々ひらひらと、早や晴れかかる銀杏いちょうこずえを矢大臣門の屋根へ飛んだ。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
帽子が飛ぶから、そのまま、藤屋が店へ投返した……と脊筋へはらんで、坊さんが忍ぶように羽織の袖が飜々ひらひらする。着換えるのも面倒で、昼間のなりで、神詣かみもうでの紋付さ。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
真黒まっくろな円い天窓あたま露出むきだしでな、耳元を離した処へ、その赤合羽の袖を鯱子張しゃちこばらせる形に、おおきひじを、ト鍵形かぎなりに曲げて、柄の短い赤い旗を飜々ひらひらと見せて、しゃんと構えて、ずんずん通る。……
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鯡鯉ひごいの背は飜々ひらひらと、お珊のもすその影になびく。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)