とうの)” の例文
内大臣の子のとうの中将やべんの少将なども伺候の挨拶あいさつだけをしに来て帰ろうとしたのを、源氏はとめて、そして楽器を侍にこちらへ運ばせた。
源氏物語:32 梅が枝 (新字新仮名) / 紫式部(著)
二十八(嘉禄かろく元年)とうの中将、二十九(嘉禄二年)従三位参議兼侍従、三十九(嘉禎かてい二年)従二位権中納言に昇り、四十四歳(仁治二年)のときすでに正二位権大納言となった。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
藤の花が夕方になっていっそう鮮明に美しく見えるからといって、長男のとうの中将を使いにして源中将を迎えにやった。
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
とうの中将も兄弟としてこの尚侍をことに愛していたが、幸福であると無条件で喜んでいる大臣とは違って、少し尚侍のその境遇を物足りなく考えていた。
源氏物語:31 真木柱 (新字新仮名) / 紫式部(著)
母方の叔父おじであるとうの中将や蔵人くろうど少将などが青摺あおずりの小忌衣おみごろものきれいな姿で少年たちに付き添って来たのである。
源氏物語:42 まぼろし (新字新仮名) / 紫式部(著)
幾つかの宴席の料理の仕度したくなどは内廷からされた。屯食とんじきの用意などはお指図さしずを受けてとうの中将が皆したのである。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
命ぜられてとうの中将が色の濃い、ことにふさの長い藤を折って来て源中将の杯の台に置き添えた。源中将は杯を取ったが、酒のがれる迷惑を顔に現わしている時、大臣は
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
愛する人を持っておいでになるのであるからと不快に大臣は思ったが、今夜に済まさねば世間体も悪いと思い、息子むすことうの中将を使いとして次の歌をお贈りするのであった。
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
とうの中将の近ごろの様子をご存じですか、あのころは明らかに第三者だと思っていた私が、こんなに恋の苦しみを味わうようになるなどということは冷淡にした時の報いです。
源氏物語:30 藤袴 (新字新仮名) / 紫式部(著)
内大臣の子息のとうの中将とべんの少将だけはもう真相を聞いていた。知らずに恋をしたことを思って、恥じもしたし、また精神的恋愛にとどまったことはしあわせであったとも思った。
源氏物語:29 行幸 (新字新仮名) / 紫式部(著)
宰相中将、式部卿しきぶきょうの宮の兵衛督ひょうえのかみ、内大臣家のとうの中将などに、蘆手あしでとか、歌絵とか、何でも思い思いに書くようにと源氏は言ったのであった。若い人たちは競って製作にかかった。
源氏物語:32 梅が枝 (新字新仮名) / 紫式部(著)
昔の朱雀すざく院の行幸みゆきに青海波が絶妙の技であったのを覚えている人たちは、源氏の君と当時のとうの中将のようにこの若い二人の高官がすぐれた後継者として現われてきたことを言い
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
などと言ったのち源氏は高官なども桟敷さじきへ伺候して来るので男子席のほうへ出て行った。今日きょう近衛このえの将官として加茂へ参向を命ぜられた勅使はとうの中将であった。内侍使いは藤典侍とうないしのすけである。
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
と言って、玉鬘夫人は歎息たんそくをしていた。右兵衛督うひょうえのかみ、右大弁で参議にならないため太政官の政務に携わらないのを夫人はうれわしがっていた。侍従と言われていた末子はとうの中将になっていた。
源氏物語:46 竹河 (新字新仮名) / 紫式部(著)
主人がたのとうの中将がさかずきを御前へ奉り、膳部を進めた。宮は次々に差し上げる盃を二つ三つお重ねになった。薫が御前のお世話をして御酒みきをお勧めしている時に、宮は少し微笑をおらしになった。
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
とうの中将に違いない。上手な笛の音だ」
源氏物語:27 篝火 (新字新仮名) / 紫式部(著)