領袖りょうしゅう)” の例文
執権高時の実弟北条泰家やすいえをあげ、その領袖りょうしゅうにも、塩田陸奥守しおだむつのかみ新開左衛門しんかいさえもんノ入道、安東高貞あんどうたかさだじょうノ越後守などの幾十将をえらび出し
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
明治十七八年ごろのことであった。改進党の壮士藤原登ふじわらのぼるしば愛宕下あたごしたの下宿から早稲田の奥に住んでいる党の領袖りょうしゅうの処へ金の無心むしんに往っていた。
雑木林の中 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
矢野文雄やのふみお小野梓おのあずさと並んで改進党の三領袖りょうしゅうとして声望隆々とした頃の先夫人は才貌さいぼう双絶の艶名えんめいを鳴らしたもんだった。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
これに反して与次郎のごときは露悪党の領袖りょうしゅうだけに、たびたびぼくに迷惑をかけて、始末におえぬいたずら者だが、悪気にくげがない。可愛らしいところがある。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
当時は市川三左衛門いちかわさんざえもんをはじめ諸生党の領袖りょうしゅうが水戸の国政を左右する際で、それらの反対党は幕府の後援により中山藩と連合して天狗残党をとうとしていたので
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかし勝四郎を領袖りょうしゅうとしている男名取らは、先ず師匠のいかりが解けて、師匠と勝四郎とのまじわりが昔の如き和熟を見るに至るまでは、盟約書に調印することは出来ぬといった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
家康という人は力ずくで人の天下をとるべき性質の人ではないので、よい番頭、よい公僕こうぼく、そういう人で、議会政治の政治家としては保守党の領袖りょうしゅうなどにまア似合う人だ。
家康 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
右党の領袖りょうしゅうらは重大な問題のたびごとに言った、「バコーに書き送らなければならない。」カニュエル、オマオニー、ド・シャブドレーヌの三氏は、多少王弟の許しを得て
「中山殿はじめ、松本奎堂、藤本鉄石、吉村寅太郎の領袖りょうしゅうは、あれから宿駕籠しゅくかご鷲家わしや村まで行った、それから伊勢路へ走ると先触れを出しておいて、不意に浪花なにわへ行く策略であったがな」
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
頑民がんみんは殺し尽すべし、遺老は寿命が来れば死ぬ。辮子はもはやとどめ得た。こうよう(長髪賊の領袖りょうしゅう)がまたもや騒ぎ出した。わたしの祖母がかつて語った。その時の人民ほどつらいものはない。
頭髪の故事 (新字新仮名) / 魯迅(著)
そして軍師呉用の案の下に、七千の泊兵はくへいは、二十二人の領袖りょうしゅうが将として編制され、ここに柴進救出の軍をくり出すことになった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
美妙斎はこの二雑誌にまたがって、あたかも政党の領袖りょうしゅうであって内閣の椅子に座しているような観があったから声望隆々として硯友社同人を圧していた。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
市川三左衛門をはじめ諸生党の領袖りょうしゅうが国政を左右する時を迎えて見ると、天狗連の一派は筑波山の方に立てこもり、田丸稲右衛門たまるいなえもんを主将に推し、き御隠居の御霊代みたましろを奉じて
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「丞相のお眼には、孫策をどうご覧になられていますか。彼は江東の領袖りょうしゅう、しかも弱冠、領民からも、小覇王しょうはおうとよばれて、信頼されておるようですが」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
沼南は当時の政界の新人の領袖りょうしゅうとして名声藉甚せきじんし、キリスト教界の名士としてもまた儕輩せいはいされていたゆえ、主としてキリスト教側から起された目覚めざめた女の運動には沼南夫人も加わって
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
ちょうど水戸藩では佐幕派の領袖りょうしゅう市川三左衛門いちかわさんざえもんが得意の時代で、尊攘派征伐のために筑波つくば出陣の日を迎えた。邸内は雑沓ざっとうして、侍たちについた番兵もわずかに二人のみであった。夕方が来た。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これは宋江らしい処分だが、しかし呉用そのほか、当夜の陣営に、髪をそそけ立てていた泊軍の領袖りょうしゅうたちの間には
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、戦場に立てば、よく大刀を使い、鉄弓を引き、万夫不当の勇がある。すなわち湖南の領袖りょうしゅう黄忠こうちゅうという——。ゆえに決して軽々しくは戦えない。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
晁蓋ちょうがい以下の領袖りょうしゅうたちも、わざとみな一時、座を去った。そしてそれに代るに、彭玘ほうき凌振りょうしんの二人が入って来た。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は、附近の泰山にいる強盗群を語らって、強盗の領袖りょうしゅう孫観そんかん呉敦ごとん昌豨しょうき尹礼いんれいなどというやから
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
例えば、世間で臆測しているように、上野介の身を、米沢へ移してしまうとか、麻布の上屋敷へかくまうとか、或は、逆襲的に赤穂方の領袖りょうしゅうたちの三、四名を暗殺してしまうとか。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)