せい)” の例文
それぞ大手の寄手の背後を突くべく、兵五百ほどをひきつれて裏門を出た扈家荘こかそうの秘蔵むすめ、あだ名を一じょうせいという女将軍であったのだ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
せい州にしゅ老人というのがあって、薬を売るのを家業とし、常に妻と妾と犬とを連れて、南康県付近を往来していた。
水に臨んだ紅葉こうようの村、谷をうずめている白雲はくうんむれ、それから遠近おちこち側立そばだった、屏風びょうぶのような数峯のせい、——たちまち私の眼の前には、大癡老人が造りだした
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
断橋だんきょう鉄軌レエルを高きに隔つる事じょうを重ねて十に至って南より北に横ぎる。欄にってすとき広き両岸のせいきわめつくして、始めて石垣に至る。石垣を底に見下みおろして始めて茶色のみちが細くよこたわる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
とはいえ、西の扈家荘こかそうの女将軍一じょうせいは、日月の双刀をよく使う稀代きたいな女傑ですし、独龍岡そのものも、不落の城、充分お気をつけなさいまし。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
りょうの時、せい州の商人が海上で暴風に出逢って、どことも知れない国へ漂着しました。遠方からみると、それは普通の嶋などではなく、山や川や城もあるらしいのです。
それが暗の中に万竿ばんかんせいをつらねて、重なり合つた葉が寒さうにぬれて光つてゐる。
京都日記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
草間蛇そうかんだあり、容易にせいを踏む事を許さずとある。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
東には撲天鵰はくてんちょう李応りおうさま一族がひかえ、西にはの大旦那をかしらに、あだ名を一じょうせいといって、ひとり娘だが、扈三娘こさんじょうというたいした腕前の女将軍もおいでなさる
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)