電燈でんき)” の例文
新字:電灯
チョット電燈でんきを消すから、その窓から向家むこうの屋根をのぞいて御覧なさい……ホラ、あんなに雪がまだらになって凍り付いているでしょ。
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
表二階の次の六畳、階子段はしごだんあがり口、余り高くない天井で、電燈でんきひねってフッと消すと……居合わす十二三人が、皆影法師。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
されば午後の縁先なぞに向ひ合つて話をする若い女の白い顏が電燈でんきの光に舞ふ舞姫バレヱのやうに染め出される事がある。
花より雨に (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
『父さん、何してるの——あの電燈でんきを勘定してるの。』
おや、もう電燈でんきが点いて居る。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しょく電燈でんきに照らされた鉄の寝台ベッドの上には、白い蒲団を頭から冠っている人間の姿がムックリと浮き上っていた。
復讐 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
が、電燈でんきを消すと、たちまち鼠色の濃い雲が、ばっと落ちて、ひさしから欄干てすりを掛けて、引包ひッつつんだようになった。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
先刻さっきから電燈でんきで照らしたほど、室内の見当はよく着けていたので、猶予ためらいもせず、ズシンと身体からだごとひらきの引手に持ってくと、もとより錠を下ろしたのではない。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それ等の驚くべき出来事のすべてが、直接に君自身と関係を持った話であることが、殆ど電燈でんきのスイッチをひねるのと同様な鮮やかさで、一時に判明して来るであろう。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
廂合ひあわいつらなるばかり、近間ちかまに一ツもあかりが見えぬ、陽気な座敷に、その窓ばかりが、はじめから妙に陰気で、電燈でんきの光も、いくらかずつそこへ吸取られそうな気勢けはいがしていた。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まったく……まだ五時だってえのに電燈でんきけなくちゃ物が見えねえなんて……店ん中に妖怪おばけでも出そうで……もっとも古本屋なんて商売は、あんまり明るくちゃ工合が悪う御座いますナ。
悪魔祈祷書 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「すぐの、だだッ広い、黒い板の間の向うが便所なんだが、その洗面所に一つ電燈でんきいているきりだから、いとどさえ夜ふけの山気にされて、薄暗かったと思っておくれ。」
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ソウスルトネ……電燈でんきが消えて真っ暗になっているの。
人の顔 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
半作事はんさくじだと言うから、まだ電燈でんきが点かないのだろう。おお、ふたどもえの紋だな。大星だか由良之助ゆらのすけだかで、鼻をく、鬱陶うっとうしい巴の紋も、ここへ来ると、木曾殿の寵愛ちょうあいを思い出させるから奥床しい。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
横店の電燈でんきが映る、暖簾のれんをさらりと、肩で分けた。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お米さん——電燈でんきがなぜか、遅いでないか。」
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)