附元つけもと)” の例文
引捻ひんねじれた四角な口を、額までかつと開けて、猪首いくび附元つけもとまですくめる、と見ると、仰状のけざま大欠伸おおあくび。余り度外どはずれなのに、自分から吃驚びっくりして
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一杯いっぱい雛壇ひなだんのやうな台を置いて、いとど薄暗いのに、三方さんぽう黒布くろぬの張廻はりまわした、壇の附元つけもとに、流星ながれぼし髑髏しゃれこうべひからびたひとりむしに似たものを、点々並べたのはまとである。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
店一杯に雛壇ひなだんのような台を置いて、いとど薄暗いのに、三方を黒布で張廻した、壇の附元つけもとに、流星ながれぼし髑髏しやれこうべひからびたひとりむしに似たものを、点々並べたのはまとである。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かつて、木下きのしたさんの柏木かしはぎやしきの、矢張やつぱにはいけかへるとらへて、水掻みづかき附元つけもとを(あか絹絲きぬいと)……とふので想像さうざうすると——御容色ごきりやうよしの新夫人しんふじんのお手傳てつだひがあつたらしい。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ヒイッと悲鳴で仰向あおむけに土間に転がり落ちると、その下になって、ぐしゃりと圧拉ひしゃげたように、膝をの上へ立てて、うごめいた頤髯あごひげのある立派な紳士は、附元つけもとから引断ひききれて片足ない
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
森なす大芭蕉おおばしょうの葉の、沼の上へぬきんでたのが、峰から伸出のしだいてのぞくかと、かしらに高う、さながら馬のたてがみのごとく、たとえば長髪を乱したていの、ばさとある附元つけもとは、どうやらやせこけた蒼黒あおぐろ
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)