銀簪ぎんかん)” の例文
ひんのよき高髷たかまげにおがけは櫻色さくらいろかさねたるしろ丈長たけなが平打ひらうち銀簪ぎんかんひと淡泊あつさりあそばして學校がくかうがよひのお姿すがたいまのこりて、何時いつもとのやうに御平癒おなほりあそばすやらと心細こゝろぼそ
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これはちょっとさびしい人通りのまばらな、深川の御船蔵前とか、浅草の本願寺の地内とかいう所へ、小さい菰座こもざを拡げて、珊瑚珠さんごじゅ銀簪ぎんかん銀煙管ぎんギセルなんかを、一つ二つずつ置いて
江戸か東京か (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
「お、こりゃア、銀簪ぎんかん!……角菱すみびしと三蓋松を抱きあわせた比翼紋ひよくもんがついております」
顎十郎捕物帳:06 三人目 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その時まだ「出」の姿で居たといえば、水車の裾模様を二枚重さねて、帯は吾妻錦、襦袢じゅばん紋壁もんかべにしおぜの白半襟えり、芸子髷に金の竹輪を掛け、花笄はなこうがいに平打の銀簪ぎんかん、櫛は白鼈甲しろ利休形りきゅうがた
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
冬は合羽かっぱこおる。秋は灯心が細る。夏はふどしを洗う。春は——平打ひらうち銀簪ぎんかんを畳の上に落したまま、貝合かいあわせの貝の裏が朱と金とあいに光るかたわらに、ころりんとき鳴らし、またころりんと掻き乱す。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
平打の銀簪ぎんかん一つ淡泊あつさりと遊して學校がよひのお姿今も目に殘りて、何時舊のやうに御平癒おなほりあそばすやらと心細し、植村さまも好いお方であつたものをとお倉の言へば、何があの色の黒い無骨らしきお方
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
銀簪ぎんかん
顎十郎捕物帳:06 三人目 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
黄八丈のそでの長き書生羽織めして、品のよき高髷たかまげにお根がけは桜色を重ねたる白の丈長たけなが平打ひらうち銀簪ぎんかん一つ淡泊あつさりと遊して学校がよひのお姿今も目に残りて、何時いつもとのやうに御平癒おなほりあそばすやらと心細し
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)