釣合つりあい)” の例文
このところはことさらにも九字くらいにする必要有之これあり、もし七字句などをもって止めたらんには上の十字句に対して釣合つりあい取れ不申もうさず候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
家庭と家庭が出ず入らずの貧乏ってことも釣合つりあいが取れる。縁談は英語でマッチだろう。要するにマッチだ。マッチ即ち釣合だ
ロマンスと縁談 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
私は兎の係蹄けいていの仕掛けてあるほとり、大きな石の上に三脚を立てて、片足は折敷いて、危うき姿勢に釣合つりあいをとりながら、ここの写生を試みた。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
しかるに台所の道具ばかりは一から十まで天保時代でそれで西洋料理は手数がかかるなんぞというのは随分釣合つりあいが取れない。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
四本の歩脚ほきゃくは、これがまた全く釣合つりあいというものを無視した細いもので、妻楊子つまようじを両側に四本ずつさしたような始末である。
南画を描く話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
君の熔金の廻りがどんなところで足る足らぬが出来るのも同じことである。万一なところから木理がハネて、釣合つりあいを失えば、全体が失敗になる。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「これなれば、夫人を恥かしがらせないで済むだろう。いや夫人の服装と丁度釣合つりあいが取れてさえいるかも知れない」
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
だから早く顋髯を生やして上下の釣合つりあいを取るようにすれば、顔の居坐いすわりがよくなって動かなくなりますと答えた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
幕府で新小判を鋳造ちゅうぞうし、その品質を落としたのは、外国貨幣と釣合つりあいを取るための応急手段であったが、それがかえって財界混乱の結果を招いたとも言える。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「これは旦那からのお礼です。もっとあげたいんだけれど、何分、年上のきよが以前からいるんでその釣合つりあいもあってそうもならないんですからしからず」
「私は、失礼いたします。こんな下手くその芝居は、ごめんです。ポローニヤスの花嫁には、海坊主の花聟でなければ釣合つりあいがとれません。では、おさきに。」
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
倉持とは釣合つりあいの取れないほどの豪家であり、高利貸としてあまねく名前の通っていることを話して聞かせた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
身体の釣合つりあいがやぶれた。(あぶない!)と口の中でさけんだとき、僕の腰は何ものかによってしっかり抱きとめられていた。いうまでもなく、僕を抱きとめたのはタクマ少年であった。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
して流行の縞模様など考えて見たこともない程の不風流ぶふうりゅうなれども、何か私に得意があるかと云えば、刀剣とうけんこしらえとなれば、れはく出来たとか、小道具の作柄さくがら釣合つりあい如何どうとか云うかんがえはある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
物理学の方では、釣合つりあいの安定、不安定ということをいう。釣合の位置から少し動かした場合に、もとの位置に戻るような偶力が出て来る場合が、安定なのである。
立春の卵 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
岨道そばみちを行くべきものとも思われないその姿が、花をかかえて岩のそばにぬっと現われると、一種芝居にでも有りそうな感じを病人に与えるくらい釣合つりあいがおかしかった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
身代しんだい釣合つりあい滅茶苦茶めちゃくちゃにする男も世に多いわ、おまえの、イヤ、あなたのまよい矢張やっぱり人情、そこであなたの合点がてん行様ゆくよう、年の功という眼鏡めがねをかけてよく/\曲者くせものの恋の正体を見届た所を話しまして
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかしその時大原君の夫人がお代さんではどうもチト釣合つりあいが悪いアハハ
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)