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野邊
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のべ
殘し
置力に思ふ妻に別れし事なれば
餘所の
見目も
可哀しく哀れと云ふも餘りあり斯くて
有べき事ならねばそれ
相應に
野邊の送りを
廣い
野邊にも
又と
無い
其花に、
時ならぬ
霜が
降りたがやうに、
死んで
行く
女、ヂュリエット!
野邊の
草木にのみ春は歸れども、世はおしなべて秋の暮、
枯枝のみぞ多かりける。
付て一同に通夜迄もなし
翌朝は
泣々野邊の
送りさへ
最懇に取行なひ妻の
紀念と
孤子を
漸々男の手一ツに
育てゝ月日を送りけり
都大路に世の榮華を
嘗め
盡すも、
賤が
伏屋に
畦の
落穗を
拾ふも、暮らすは同じ五十年の夢の朝夕。
妻子珍寶及王位、
命終る時に隨ふものはなく、
野邊より
那方の友とては、
結脈一つに
珠數一聯のみ。
盡しけれども終に
養生叶はず
相果けり因て
兄半作は勿論半四郎も
元より孝心深き者ゆゑ
其愁傷大方ならずと雖も
斯て有べきにあらざれば
泣々野邊の送りを