遅咲おそざ)” の例文
旧字:遲咲
冬が訪れかけて、時々、しもを見る朝もあったが、忘れられた庭の隅や、往来のまがきに、まだ秋の残り香のように、菊の遅咲おそざきが匂っていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いけほとりると、わかひとたちがボートをこいでいました。遅咲おそざきのさくらはなって、みずうえただよっています。もうどこからか、かえるのこえがしました。
僕が大きくなるまで (新字新仮名) / 小川未明(著)
安心あんしんしてまっていらっしゃい。天気てんきがこうわるくては、どこへもいかれないでありましょう。野原のはらはさびしいにちがいない。遅咲おそざきのりんどうのはなも、もうれた時分じぶんです。
雪くる前の高原の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すがめのおんなが、はまほうかえった時分じぶんから、みなみかぜきはじめました。あまりあたたかなもので、遅咲おそざきのはなまでが、一き、したからは、いろいろのくさが、一うちしたのであります。
女の魚売り (新字新仮名) / 小川未明(著)