つろ)” の例文
貴族は命のやり取りなどはなさいませんでも、死ぬにもまさった名誉の損というものがあるのですからね。かえってつろうございます。
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「地方は土地が狭うございますから、勢い民間の人達とも交際しなければなりません。それがつろうございました」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
お前もお父つあんが苦しんでるのんを、傍から見てるのんはつろうてどんならんやろけど、言や言うもんの、わいにもわいの考へがあつて、来てもろたんやぜ。
聴雨 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
町「未練がましく近寄れば必ず離縁されるに相違ござりませぬ、わたしゃアそれがつろうございますから」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と云ってお二人からめられたり、冷やかされたりしました時のつろう御座いましたこと……。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「いや、そうれがましゅうおおされては、勝入は、穴にでもはいりたい。聟の短慮からお味方の出鼻をくじき、何と、お詫び申そうやら、実は、お目にかかるのがつろうおざった」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そんなことちょっとも云われしまへんよってに、尚のことここがつろうて辛うて、………
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
はっきりしたにちはわからしませんが、一年ぐらい前から、うちの身体に、ときたま、けったいな変化が起こるのンですが、そのあいだ、つろうてつろうて、息もでけへんよになるのンです。
姦(かしまし) (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
幾がねえさんにね、姉さんのお部屋へやでね、あの、奥様、こちらの御隠居様はどうしてあんなに御癇癪ごかんしゃくが出るのでございましょう、本当に奥様おつろうございますねエ、でもお年寄りの事ですから
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
ただわたくしが継々まましい仲だものですから、妙に邪推されはしないかと、それだけがつろうございますわ。ですから、わたくしの立場としましても、一日も早く三千子の安否が知りたいのでございます。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「そんなことがあるもんですか。少しぐらい体が弱っていたって、私が大丈夫うまく産ませておあげ申しますから……それにあなたは初産ういざんじゃないのですからね。年取ってからの初産は少しつろうございますよ。」
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
喧嘩のけの字も申しませんゆえ何卒どうぞお許し遊ばして、御飯ごぜんあがって下さいまし、手を下さずとも親を乾し殺すも同様であるとの御一言は、文治郎身を斬られるよりつろうございます
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あんぢようなついてるやろか思うたら、もうその事が心配でなあ、毎晩夢に見るぐらゐだすねんけど、福子の前やつたら、そんなことちよつとも云はれしまへんよつてに、尚のことこゝがつろうて/\
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
わらわもつろうございまする。どうぞおみとり賜わりませ
特別に秋風は身にんでつろうございます。
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
あんぢようなついてるやろか思うたら、もうその事が心配でなあ、毎晩夢に見るぐらゐだすねんけど、福子の前やつたら、そんなことちよつとも云はれしまへんよつてに、尚のことこゝがつろうて/\
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「眠とうて、奉公がつろうなったか」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)