けっ)” の例文
と足を取ってすくわれたから仰向に倒れる処へ、甚藏が乗掛って掴まえようとする処を、新吉が足を挙げて股をけったのが睾丸きんたまに当ったから
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
隣の室では人が入ったり出たり、廊下を駈けたり、階段をけったり、私語ささやいたりしかったりする。思い合わすれば、たしかに変事があったに相違ない。
ツンと横を向く、脊がきっと高くなった。ひっかなぐって、その手巾をはたとつちなげうつや否や、もすそけって、前途むこうへつかつか。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
殆ど前半身を宙に伸び上げ細い前足で空をけって居る欧洲一の名馬、エピナールに乗り、その持主、パウル・ウエルトハイマーが通ると人々は息を止め、霧の中で盛な拍手が起った。
ドーヴィル物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
負傷して水に落ちたものもある。負傷せぬものも急に水中に飛び込んで、皆片手を端艇のふなばたに掛けて足で波をけって端艇を操りながら、弾丸たまが来れば沈んで避け、又浮き上がって汐を吐いた。
堺事件 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
わたしも少しく顔をくもらせた。震災に焼かれてバラツクを建てゝ、それを又焼かれてはたまらない。まつたく踏んだりけったりの災難であると、わたしは我身にひきくらべて、心から気の毒に思つた。
赤い杭 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
女学生が五十人ばかり行列を整えてむこうからやってくる、こうなってはいくら女の手前だからと言って気取る訳にもどうする訳にも行かん、両手はふさがっている、腰は曲っている、右の足は空をけっている
自転車日記 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いろ/\訳があってみんなわっちこしらえた事、というのは私が萩原様のあばらけって殺して置いて、こっそりと新幡随院の墓場へ忍び、新塚を掘起し、骸骨しゃりこつを取出し、持帰って萩原の床の中へ並べて置き