あと)” の例文
僕等はたとひ意識しないにもせよ、いつか前人のあとを追つてゐる。僕等の独創と呼ぶものは僅かに前人の蹤を脱したのに過ぎない。
近曾このごろ九九すずろに物のなつかしくありしかば、せめて其のあとをも見たきままに帰りぬれど、かくて世におはせんとは努々ゆめゆめ思はざりしなり。
従来善牙獅のあとを追い残肉を食い行く性悪の一老野干あり、今虎が獅と連れ行く事となって自分の得分が乏しくなったのをうらみ離間策を案出し
火遁の術は奇にしてあと尋ねかたし 荒芽山畔まさしずまんとす 寒光地にほとばしつて刀花乱る 殺気人を吹いて血雨りんたり 予譲よじよう衣を撃つ本意に非ず 伍員ごいん墓を
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
さらに快活なる意気をもって泰西たいせい文明のあとを追走し、もってこれと競争せんと欲するがごときの形勢を現出したるは、吾人がかつ訝りかつ祝するゆえんにして
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
此詩は茶山と波響との交を知る好資料であつて、たゞに甲子舟遊の発端を見るべきのみでなく、寛政より文政に至る間の二三聞人の聚散のあとがこれに由つて明められる。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
先人のあとをふみつゝ、ます/\その深奥な『自然』に面して勇しく進んで行かなければならない。
小説新論 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
やや有りて彼はしどなくベットの上に起直りけるが、びんほつれしかしらかたぶけて、カアテンひまよりわづかに眺めらるる庭のおもに見るとしもなき目を遣りて、当所無あてどなく心の彷徨さまよあとを追ふなりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
明治二十二年の夏には、父に伴われて磐梯山破裂の跡をたずねての帰途初めて、二十七年の九月には、利根水源探検隊のあとって偶然にも、私は尾瀬の一部に足を蹈み入れた。
尾瀬の昔と今 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
天衣無縫と言おうか、鳥道あとなしと言おうか、まるで引っかかりがありません。ただすべすべした珠玉たまでありました。そして当人はそれを無理に努めているようにも見えません。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
雲突く修驗山伏すげんやまぶしか、先達せんだつあとふんでゆく。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
世をばげきせしあとを見よ
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
僕の俊寛もこの点では、菊池氏の俊寛のあとを追ふものである。唯菊池氏の俊寛は、むしろ外部の生活に安住の因を見出してゐるが、僕のはかならずしもそればかりではない。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あとけ行くとここに至って見えず、その地を掘って金を求めた跡が現存すといい、二四〇巻には秦の恵王蜀を伐たんとて石の牛五頭を作り、毎朝金をその後に落し牛が金を便するという