)” の例文
二人の相いで木に就いた時、蘭軒は始て黄葉夕陽村舎詩の刻本を手にすることを得、甲子の旧遊を想起して此を賦したのである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
彼はにはかに心着きて履物はきものあらため来んとて起ちけるに、いで起てる満枝の庭前にはさきの縁に出づると見れば、傱々つかつかと行きて子亭はなれの入口にあらはれたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そうして父の後をいで弁護士となって、正義の為に幾多の事件を争った。清川は青春時代の憧憬あこがれのまま文学を学び、戯曲家として世に出た。
正義 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
そして、信長と秀吉と家康は、満身に照明を浴びつゝ相いで登場して、英雄の名をさらつてしまつたのである。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
我々はその後からいて行て一町余り行くと、やぶのある横丁、極めて淋しい処へ来た。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
亀鶴眠るにその膝をくなり〉、今も俗に膝を抱いて眠るを猿子眠りというなりと。
あといてて、渠等かれら狐格子きつねがうしそとまつたのである。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まだいて来るの。私、直ぐ帰るから、先へお帰りよ。
春:――二つの連作―― (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
われふるいに襲はる。なみだいでつ。
隴西ろうせい李白りはく襄陽じょうよう杜甫とほが出て、天下の能事を尽した後に太原たいげん白居易はくきょいいで起って、古今の人情を曲尽きょくじんし、長恨歌ちょうこんか琵琶行びわこうは戸ごとにそらんぜられた。
魚玄機 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
然るに拙者は独りこれが治療に任じ、絶て人にはからない。是は若し一人に諮るときは、二人三人がいで来り、蘭方医も亦あづかり聞かむと欲するに至らむこと必然であつたからである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
翁は四月頃に先ず死し、まだ百箇日の過ぎぬ間に、媼もいで死したそうである。わたくしは多少心を動さざることを得なかった。これを記している処へ、丁度宮崎虎之助さんの葉書が来た。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
文久三年柏軒に随つて京都に赴き、その病を得るに及んで、同行の塩田、いで至つた清川即当蒔の多峰と倶に看護に力を竭し、易簀えきさくの日に至るまで牀辺を離れなかつたことも亦同じである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)