踏潰ふみつぶ)” の例文
「そうよ、其奴を、だん踏潰ふみつぶして怒ってると、そら、おいら追掛おっかけやがる斑犬ぶちいぬが、ぱくぱくくいやがった、おかしかったい、それが昨日さ。」
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もし私の通ったような道を通り過ぎた後なら致し方もないが、もしどこかにこだわりがあるなら、それを踏潰ふみつぶすまで進まなければ駄目ですよ。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、挨拶したり、すぐ、ぼろの出る粗悪品を輸出したりして、大阪商人及び大阪人の面目玉めんぼくだまを、踏潰ふみつぶした、野郎共は、他国の、奴にちがいない。
大阪を歩く (新字新仮名) / 直木三十五(著)
見ると、誰が暴れたのかわからないが昨夜の大きな酒樽が引っくり返って、栓が抜けている横に、汁椀が踏潰ふみつぶされている。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
候わば今日道通りの民家を焼払わしめ、明日は高清水を踏潰ふみつぶし候わん、と氏郷は云ったが、目論見もくろみ齟齬そごした政宗は無念さの余りに第二の一手を出して
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「大名の力でやりや、源太郎の家位は踏潰ふみつぶせさうなものぢやありませんか、家搜し位はお茶の子さい/\で」
打毀ぶちこわすから代りをとって来なさいと云て、その枕を取上げて足で踏潰ふみつぶして、サアどうでもしろ、つかかかって来るなら相手になろうとわぬばかりの思惑を示した所で、決して掛らぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
うだと二拾人も角力取がおして来れば踏潰ふみつぶしてしまう、然うだろうよ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
泥鉢は一堪ひとたまりもなく踏潰ふみつぶされた。あたかも甚平の魂のごとくにくじけて、真紅の雛芥子は処女の血のごとく、めらめらとさっと散る。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
瞬く間に踏潰ふみつぶされて終うか、くとも城中疑懼ぎくの心の堪え無くなった頃を潮合として、扱いを入れられて北条は開城をさせられるに至るであろう、ということであった。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「ウン。慌てていたせいか、鋳型を一箇所踏潰ふみつぶしたんで、怒鳴り付けられただけだ」
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そこで、かがんで、毛虫を踏潰ふみつぶしたような爪さきへ近く、切れて落ちた、むすびめの節立った荒縄を手繰棄てに背後うしろ刎出はねだしながら、きょろきょろと樹の空を見廻した。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二人をにらみ据えて言葉も荒々しく、政宗謀叛とは初めより覚悟してこそ若松を出でたれ、何方いずくにもあれ支えたらば踏潰ふみつぶそうまでじゃ、明日あすは早天に打立とうず、とののしった。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)